いつ、どのくらい寝てる?国民平均よりはるかに短い看護師の睡眠時間の実態
『眠らない日本人』といわれる様に、日本人の睡眠時間は外国に比べても短く、経済協力開発機構(OECD)の調査結果(2014年3月に公表)によると、日本人の平均睡眠時間は7時間43分(土日含む)で、全26ヵ国(平均8時間19分)のうち韓国に次いで2番目に短くなっており、特に働く女性については世界で1番睡眠時間が短いという総務省のデータもあります。
睡眠不足になりやすい職種としては、IT関連のエンジニア・教員・長距離トラック(バス)の運転手・パイロット(管制官)などと共に医師や看護師といった医療従事者は勤務時間が不規則で寝不足になりがちな代表的な仕事です。
看護師は慢性的な睡眠不足
働く女性で医療従事者、日勤・夜勤・準夜勤の交代勤務で働く看護師の睡眠時間はどのくらいなのでしょうか。 日本ナース・ヘルス研究のベースライン調査(対象:30歳以上の女性看護職3万9,371人)によると看護師全体の平均睡眠時間は6.4時間程度という結果でした。
年代別では20代・40代が短く、職位別では師長が、職種別(保健師・助産師・看護師・准看護師の比較)では、看護師が最も少なくなっています。 総務省統計局の調査では女性の平均睡眠時間は7時間35分(「社会生活基本調査」による)なので、看護師は国民平均よりも1時間も睡眠時間が少ないというのが実態です。
病床がある総合病院や大学病院に勤務する看護師は、2交代制や3交代制のシフトで勤務をしている事が多く、各看護師の体調や睡眠時間などを考慮してローテーションを組んでいる様です。しかし、勤務時間が不規則だと、就寝時間・起床時間も不規則になり、日によって睡眠時間が長い日もあれば短い日もあるなど安定した睡眠時間を確保することが難しくなります。また、不規則な勤務時間に体が慣れず、しかもストレスなどが重なって毎日の睡眠時間が平均3時間ぐらいの人も少なくない様です。
睡眠不足が仕事や健康に与える影響
日本医療労働組合連合会による「看護職員の労働実態調査(2013年)」によれば、慢性疲労を訴える看護師は74%、健康に不安がある人は60%、また67%に人は強いストレスを感じるとし、その自覚症状としては、全身がだるい54%・いつも眠い38%・目が疲れる41%・イライラする33%・憂鬱な気分がする33%・根気が続かない22%となっています。
睡眠不足でぼおっとした状態は仕事上での事故のリスクも大きくなります。不眠状態が続くと、深夜から明け方の時間帯での人間の作業能力は極端に低下し、酒気帯び状態での同じ作業をするより劣るほどだという実験結果もあるほどです。指示されたことが頭に入っていない・うっかり忘れた・見間違えたなど、集中力や根気を欠いた中で一歩間違えれば大事にいたる様なミスが起こってしまうのです。
また、不十分な睡眠時間は、『睡眠中の循環器系機能に負担をかけ健康リスクを高くする』『睡眠不足で体重が増加し成人病のリスクが高くなる』『睡眠の質が低いと記憶力や思考力が有意に劣る』など健康的なリスクも大きくなります。
睡眠の質・寝付きを上げるための方法
短い睡眠時間でも睡眠の質を上げたり、寝付きを良くしたりという工夫で体への負担はかなり変わってきます。 日勤のみの職場以外では夜勤は避けられないことですが、『夜勤中は休憩をこまめに取り照明は明るめにする』『夜勤明けの帰宅後では強い光を避けてすぐ寝る』など夜勤の時にも注意すれば、睡眠の質を上げることができ、疲れを取ることができます。
寝る前はホットミルクやココアなどの温かい飲み物を飲む
温かい飲み物はリラックス効果があり、自律神経系の緊張を解きます。 ミルクには神経の高揚を抑えるビタミンB群やカルシウムが豊富ですし、ココアにはフェニルエチアミン(抗うつ作用や幸福感を誘発する物質)が含まれており、リラックスするには最適です。
寝るときには音を遮断する
寝るための音環境は、40デジベル(静かな図書館レベル)以下であることが理想とされています。一般的な会話は60デジベル程度なので、扉や窓は閉めた方がいいでしょう。
寝る前のパソコンやスマートフォンなどの強い光は避ける
寝るときに必要な明るさは0.3ルクス(月明かりと同程度)以下と言われています。それより明るいと睡眠が妨げられてしまいます。 最近では、寝る前にスマホを触る人も増え厚労省も警鐘しているほどですが、スマートフォンやタブレットの光を夜間に浴びると、メラトニンというホルモンの分泌量が抑制され、眠りが浅くなったり寝付きが悪くなるという症状が現れます。
枕や寝具の色、アロマなど寝室環境をかえてみる
寝具などはリラックスしやすい色をえらびましょう。またラベンダーなどの香りは不眠解消に効果があると言われています。ラベンダーの精油をハンカチやテイッシュに垂らし枕元に置くだけで香りが広がります。
看護師の睡眠不足の解消は医療現場の労働環境の改善が不可欠ですが、体調管理のためにも看護師自身が睡眠時間を確保する努力が必要です。