「子どもが好き」だけではツトマらない。小児科で働く看護師のお仕事
どの診療科にもそれぞれに仕事の特徴があります。 子どもが好きだから小児科希望という看護師も多く、看護学生の間では人気の職場の一つなのですが、実際には小児科ならではの大変さもあり総合病院や大学病院等では小児科が敬遠される事もあるようです。
小児科は0歳の新生児から15歳(中学生・高校生くらい)までの小児を対象とした診療科目で、内科や外科などの専門的な科目での治療を行うのではなく、子どもの病気の全般的な治療を行っています。 急激な少子高齢化が問題になっていますが、それに伴い小児科を診療科目とした医療機関は減少しています。
厚生労働省が毎年行っている全国の病院(20以上の病床がある医療施設)と診療所(病床が19以下の医療施設)の数及び診療科目数の調査によると、小児科(2702件/43減)は、産婦人科(1218件/21減)・外科(4786件/39減)などと共に減少しており、実に19年連続の減少、約20年前の1992年と比較すると小児科を診療科目に示した病院は約3割減少しています。(産科や産婦人科を診療科目に示した病院は約4割減)。
主な原因としては、訴訟リスクの増加・診療報酬が他の科目に比べて少ないこと・診療にかかる時間や労力の過剰負担により医師の専門離れが進んでいること等が考えられます。
小児科の看護師の仕事内容
小児科で扱う病状は非常に広範囲で、健康診断や予防接種などの予防医学的なことも行われています。 総合的な診療が行われるため、そこで働く看護師にも総合的な知識や技術が求められますが、仕事内容としては他の診療科目と大きく異なることはありません。メインの仕事は、症状の確認・医師の補助・検査や処置・急変時の処置・小児と保護者への説明及びケアなどになります。
小児患者はぐずったり診察を嫌がることも多く、特に注射や検査に怯えて泣いたり、点滴を抜いてしまったり、安静を保持することも困難です。また、自分の症状を上手に伝えられないことも多く、病気の症状や副作用が突然現れることも多いので、表情や身体の様子や泣き方などから変化を察知して判断することが重要になってきます。 そして、特に他の科と違っている点は、『小児患者とその親に対する対応が重要』である点です。
小児科病棟などでは、通常ならば病棟看護師が行うおむつ交換や食事介助などを保護者が行う場合があります。入院生活が長期化するとわが子の病状や他の患者の急変などといった様々なことから保護者は常に不安定な精神状態におかれ、また患者である子ども達も保護者の精神状態に左右される事が多いようです。また看護師に対する保護者からのクレームも増えています。 ですから、看護師は患者のケアと同時に保護者の心身ケアにも取り組まなければなりません。 小児科を転職した看護師の中には、子どもは好きでやりがいもあったが、保護者への対応が辛くて辞めたという人も多いのです。
小児科は看護業務のなかでも難しいと言われています。 子どもが重い病気と向き合う現場は精神的にもかなりつらいものです。その上、採血ひとつにしても血管が細いため高度な技術が必要ですし、看護の基本的な技術はもとより、子どもとその保護者との意思疎通を図るコミュニケーション能力が求められるのです。
小児科の看護師にとって大切な要素
- 鋭い観察力・状況判断力
- 高度な技術力
- 保護者との意思の疎通
- 子どもが好き
小児科の看護師への転職
小児科は成人看護とは違い様々な診療科の知識や看護スキルを身につけることができ、看護師としての幅も広がります。 小児科看護師としてスキルアップを目指すには、日本看護協会が設けている専門看護師資格である『小児戦痕看護師』を取得するという方法もあります。
専門看護師はある特定の専門看護分野で卓越した看護実践能力があると認められたエキスパートであり、小児看護は、『子どもたちが健やかに成長・発達していけるように療養生活を支援し、他の医療スタッフと連携して水準の高い看護を提供すること』を目的としています。受験資格などハードルはかなり高めですが、より専門性の高い看護師としてのキャリアアップや小児科に特化した専門的な治療を行っている各地のこども病院などへの転職のためには目標にしたい資格です。
心身共にハードな職場でありながら、小児科を希望する看護師はずっとそこで続けたいと考えている人も多く、特に小児科に特化しているこども病院や子ども医療センターの様な医療機関では希望者が多く、競争倍率はとても高くなっています。また冒頭に記した様な理由で小児科を開設していない病院も多くなっています。
同じ小児科でもクリニックや総合病院の小児病棟など医療機関によって患者の人数・処置の方法・病状・看護師の配置体制・業務範囲などが大きく異なります。小児科に限りませんが、転職を考える際には、病院の規模・患者数・看護師の業務範囲・勤務体系などを事前にしっかりと確認しておくことが大切です。