ゴードン看護診断マニュアルを用いたアセスメントの書き方を解説!
看護学生や看護師にとって「アセスメント」は、看護過程におけるプロセスの1つです。看護の重要なポイントであり、「アセスメント」を明確にしておかなければ、カルテが整理できずに十分な看護ができなくなるでしょう。
「アセスメントを書くのは難しい」と思われがちですが、ゴードンの「11の健康機能パターン」などを押さえておけば、誰でも理解できるようになります。
そこで本記事では、押さえておきたいゴードン看護診断マニュアルを用いたアセスメントの書き方やポイントについて解説していきましょう。
- アセスメントとゴードン看護診断基準
- ゴードン理論に基づくアセスメントの書き方
- ゴードン理論とアセスメントに関してよくある質問
この記事を読むことで、ゴードン看護診断マニュアルの理解を深め、アセスメントの書き方とポイントが分かります。ぜひ参考にしてください。
1.アセスメントとゴードン看護診断基準
まずは、ゴードン看護診断マニュアルがどのような内容なのか、基礎知識を深めていきましょう。
1-1.アセスメントとは何か?
アセスメントは看護の世界において、「評価・査定」という意味を持っています。患者に関する「主観的情報」と「客観的情報」の情報収集を行うのがアセスメントです。つまり、患者の問題を特定し、適切な看護計画を立てるために必要不可欠な看護過程といえます。適切なアセスメントを行うためには経験も必要ですが、ゴードン理論など、基礎となる考え方を理解することが大切なのです。
1-2.看護概念のモデルになったゴードンの理論
マージョリー・ゴードンはアメリカの博士で、カルテや患者から得た情報を整理する理論「11の機能的健康パターン」を説きました。ゴードン以外にも、ヘンダーソンが編み出した「ヘンダーソンの基本的欲求(14項目)」がありますが、カルテ整理にはゴードンが有力だといわれています。その証拠として、現在の看護概念のモデルになりました。得た情報を整理整頓し、適切なアセスメントを行うためのテンプレートとして考えてください。
1-3.「11の健康機能パターン」とは?
ゴードンが提案した「11の健康機能パターン」は、大まかに11のパターンに分かれ、それぞれ細かい項目が定められています。以下に、「11の健康機能パターン」をまとめたので、しっかりと暗記しておきましょう。
- 健康知覚・健康管理:既往歴・現病歴・健康状態・病気への理解-喫煙・アルコール・薬物・アレルギーの有無
- 栄養・代謝:身長、体重、BMI、体温の変動・悪寒、発汗の有無-嗜好・偏食・間食・食欲・食事制限の有無-爪・毛髪・皮膚・体液の状態と、感染の兆候
- 排泄:排便の回数・性状・量、不快感や残便感の有無-排尿の回数・性状・量、不快感や残尿感の有無-ドレーンからの排液(量・性状・皮膚の状態)
- 活動・運動:呼吸、脈拍、血圧など、バイタルサインの正常確認歩行状況と姿勢、身体の障害・運動器系症状の有無セルフケア行動・移動動作など運動機能の正常確認
- 睡眠・休息:睡眠時間・熟眠度、入眠障害・睡眠中断の有無健康時の休息の有無と休息の仕方
- 認知・知覚:視力・聴力・味覚・嗅覚・触覚・知覚など感覚器の状態疼痛・掻痒感・眩暈・しびれの有無と程度意識レベル・言語能力・記憶力・理解力の状態
- 自己認識・自己概念:表情・声・話し方、疾病や治療に対する思い・感情不安・絶望感・無力感の有無自己尊重、家庭や社会における役割遂行と自立
- 役割・関係:家族の構成や家族に対する思い、キーパーソンの有無職業(学校)における内容・役割・満足度
- 性・生殖:月経事情、生殖器の状態、妊娠・分娩回数性関係に対する問題の有無と満足度
- コーピング・ストレス耐性:ストレス因子の有無、ストレス発散方法家族や友人など、身近な相談相手の有無
- 価値・信念:宗教・宗教的習慣の有無とその内容家族のしきたり・習慣の有無とその内容
2.ゴードン理論に基づくアセスメントの書き方
では、ゴードン理論に基づくアセスメントの書き方はどうすれば良いのでしょうか。基礎となる方法と、ポイント・コツについて解説します。
2-1.アセスメントの書き方の基本「SOAP」
まず、アセスメントの書き方で基本となる「SOAP」について説明します。SOAPとは、患者から主観的(S)・客観的(O)な情報を収集した後、アセスメント(A)し今後の看護計画(P)を立てる看護記録の書式です。それぞれのアルファベットの意味を以下にピックアップしました。
- (S)ubject(主観):主観的見解。患者本人や家族の訴えのこと
- (O)bject(客観):客観的見解。誰が見ても分かる事実を示す。「たぶん」「だと思う」など曖昧な記述はNGで確かな情報のみを記載する
- (A)ssessment(アセスメント):評価を意味し、入手した客観的な事実、それに対する援助者の評価・課題分析を記載する
- (P)lan(計画):上記の事実に基づいた計画のこと。今後の治療方針や展望などを記載する
2-2.「SOAP」とゴードン理論を組み合わせた書き方
前述した「SOAP」とゴードン理論を組み合わせてアセスメントをする場合は、患者の客観的情報(S)や主観的情報(O)から、観察項目が1-3にあるパターンのどの領域に当てはまるのか見極めることが大切です。観察項目に当てはまる領域をしっかりと意識すれば、必要な情報から適切なアセスメントができるようになります。そのためには、ゴードン理論をきちんと理解し暗記しておかなければなりません。
2-3.ポイント、コツは?
看護師として働き始めたばかりのころは、「本当にこれで良いのかな?」と不安になることが多いでしょう。そんなときは1人で悩まずに、先輩看護師から患者の症状についてどのようにアセスメントしたのか尋ねてみてください。また時間があれば、自分が書いたアセスメントをほかの看護師に見てもらうのもポイントの1つです。アセスメントはどうしても自分のクセが出てきてしまいます。定期的に、ほかの看護師にアドバイスをもらうことで、問題点を見つけることができるでしょう。
2-4.具体例を紹介!
たとえば、睡眠不足で元気がない患者がいるとします。現在の患者の様子は以下のとおりです。
- 現状:最近眠れないという訴えがある、倦怠感がある、歩行する際にふらつきがある
- 原因:睡眠不足による能力低下
- 予測:不眠が続いているため、転倒の注意が必要
上記の内容を「SOAP」に当てはめると以下のとおりになります。
- S:最近あまり眠れていない、眠りが浅い
- O:倦怠感があり、日中はベッドの上で過ごすことが多い。歩行時はふらつきがある様子
- A:睡眠不足による倦怠感があり、日中はベッドで過ごすことが多い。現在は睡眠不足による能力低下で歩行時にふらつく様子が見られる。不眠が続いているので転倒に注意
- P:医師への報告、指示をあおぐ。歩行時は介助を行う
アセスメントで最も大切なのは「論理的思考(問題を解決する考え方)」です。現状と原因がハッキリしているアセスメントなら、予測ができるようになり看護計画も立てやすくなるでしょう。
2-5.ゴードン理論の活用ポイントは「情報整理」
ゴードン理論をアセスメントに活用する前に、患者の全体像を把握しておかなければなりません。患者によって状態が異なり、得られる情報も違います。そのため、ゴードン理論をアセスメントに活用する際は、「情報整理」が大切なポイントになるでしょう。頭の中でゴチャゴチャになる際は、ゴードンの機能的健康パターンを印刷し、患者から得た情報と見比べてみてください。情報は箇条書きでも良いのでメモしておくと整理しやすくなります。
2-6.「S」と「O」をハッキリと区別する
アセスメントを適切に記すためには、「S」と「O」をきちんと区別することが大切です。「S」は患者や家族が実際に発した言葉、「O」は患者との会話や観察したことから客観的データを示してください。情報収集の際に、その場で丁寧にメモしていきましょう。
3.ゴードン理論とアセスメントに関してよくある質問
ゴードン理論とアセスメントに関してよくある質問を6つピックアップしてみました。
Q.「1.健康知覚・健康管理」におけるSとOの記載例が知りたい
A.たとえば、タバコが原因で健康状態が悪化している人がいるとします。その人の話から、(S)「早く治して退院したい・タバコをやめる気がない」と主観的な内容を記載してください。それから、患者の様子や日常生活の話を聞き、(O)に「20歳から現在まで1日20本吸っている」「禁煙経験なし」と情報をまとめていきましょう。決して、難しく考える必要はありません。(S)では患者の言葉をそのまま記載し、(O)は観察や聞き取りによって得られた客観的事実だけで良いのです。
Q.アセスメントに必要な論理的思考とは?
A.「~だから○○の結果になる」という因果関係を整理し順序立てて考えることが「論理的思考」です。ロジカルシンキングともいわれています。アセスメントにおける論理的思考は、「問題を解決する考え方」です。患者が何を訴えているのか、どうすれば問題が解決できるのか考えていけば、論理的思考が自然と身につくでしょう。
Q.患者の異常をいち早く把握するためのポイントは?
A.日ごろの患者の情報収集に気を配ることが大切です。たとえ、多くの患者を抱えていたとしても、1人1人の状態は常にチェックしておかなければなりません。前日との違いはないか、家族から何か気になることを聞いていないかなど、少しでも気になるところがあれば、メモを取るのがおすすめです。
Q.アセスメント能力を身につけるポイントは?
A.アセスメント能力を培うためには、ある程度の経験も必要だといわれています。ですから、新米看護師でアセスメントが苦手なのは当たり前なのです。だからこそ、先輩からいろいろなことを学び、さまざまな経験を積み重ねてください。また、先輩看護師がどんなアセスメントをしているのか参考にするのも大切なポイントです。
Q.適切なアセスメントを書くために、意識することは?
A.情報と情報を組み合わせて結論を導くのが「アセスメント」だと考えてください。たとえば、高齢者+眠剤=転倒リスク、抗がん剤治療中+吐き気=副作用など、さまざまな情報を足して答えを導きます。アセスメントと聞くと、どうしても難しく考えてしまいがちですが、自分が持っている知識と経験に加え、患者の状況など情報を足して、今後どうすべきか考えるだけで良いのです。
Q.アセスメントがうまく書けない人の特徴は?
A.アセスメントがうまく書けない人は、「現状判断」「原因の特定」「今後の予測」がきちんとできていない可能性があります。まずは、これらの漏れがないかどうか、見直してください。この3つの中でも大切なのは、「現状判断」です。現状判断が適切でないと、原因の特定・今後についての予測もできません。患者の発言や容態などをチェックし、収集した情報から現状判断しましょう。
まとめ
ゴードン理論を活用したアセスメントは、「論理的思考」と「SOAP」がポイントとなります。ゴードンが唱えた「11の健康機能パターン」を軸に、患者の様子を常に毎日チェックしながら、「正常」と「異常」の違いをハッキリと分かるようにしていきましょう。カルテに記載するときは、客観的(S)と主観的(O)をもとに、アセスメントを書き込んでいきます。難しく考えすぎずに、看護師としての経験を積み重ねながら患者の全体像を把握していきましょう。
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