看護師への進路に悩んでいるあなたへ。養成機関主流の『看護専門学校』と激増中の『看護大学』の違いは?
看護師になるための教育機関には看護専門学校・看護短大・看護大学(看護系大学)・高等看護学校があり、それぞれの養成期間は、看護専門学校(全日制の場合)が3年・看護短大が3年・看護系大学が4年・高等看護学校(高等学校衛生看護科と衛生看護専攻科の一貫教育の場合)が中学校卒業後5年となっています。いずれにしても看護師国家試験に合格する必要がありますが、看護師への進路の選択肢は多岐にわたりそれぞれに違いがあります。
ここ最近急増している「看護(看護系大学)」と、看護師養成の主力である「看護専門学校」の違いを比べてみましょう。
激増している『看護大学(看護系大学)』の特徴
看護大学は、看護教育を行っている4年制の大学のことで、この他に看護系大学という4年制の大学もあります。その形態は様々で、看護学部看護学科のみの単科大学・総合大学の医学部保健学科・医学部看護学科などがあります。最近は大学の看護学科が急増し、学生募集を行っている日本の大学数758大学のうち看護学科がある大学数は228大学、ほぼ3.3大学に1校は看護系の学科があり、平成26年度の看護学科の入学定員は19,684人(前年より1,800人増加)にもなっているというデータがあります。平成元年には11大学(定員558人)にしかなかった看護学科は、この20数年間で大学数では20倍・定員では35倍に脹れあがりました。(旺文社 教育情報センターの調べ 2014年1月)
看護系大学では、高度医療ニーズの高まりに対応するために、看護学を体系づけて学び、その上で患者の状況の把握・対応するための判断力や実践力を養うカリキュラムが組まれています。また、一般教養科目が充実しており幅広い分野の学習ができ、さらに大学院に進学することも可能です。
卒業までの必要単位は124単位以上、看護系大学を卒業すると看護師以外に助産師国家試験受験資格(助産師課程がある大学において所定の科目を履修した場合)・保健師国家試験受験資格も得ることができます。また、保健師資格を取得すれば申請により養護教諭二種免許を取得することもできるので、卒業後の職業選択に関しては、可能性が広がることになります。
専門的な分野以外の幅広い知識習得が必須であり、専門学校では学ばないようなジャンルの看護学も学べる看護系大学で看護師の資格を取得するということは、看護の技術だけではなく、論理的思考能力をつけてより広くより専門的に社会的に貢献できる人材となるということなのです。
看護師養成の主力『看護専門学校』の特徴
看護専門学校は看護師になるための知識と技術を習得できる専門学校で、国内には600校以上あり2番目に多いと言われる美容専門学校の200校の約3倍、学科別生徒数では看護専門学校が94,608人で理学・作業療法関連の37,653人・美容関連の34,577人などに比べてダントツです。(平成25年度学校基本調査データより)
看護師を希望する大学の看護学科が激増したとはいえ、入学定員で見れば看護師養成の主力は依然として看護専門学校で、大学・短期大学に比べて現場での実践力を養う教育に比重が置かれており、学習時間の3分の1が看護実習と言われるほど実習が多いのがカリキュラムの特徴です。
看護専門学校は、3年制(定時制、統合カリキュラム校の場合は4年)で、卒業までの必要単位は93単位以上(保健師・看護師統合カリキュラム校は111単位以上)、卒業すると看護師国家試験受験資格(保健師・看護師統合カリキュラム校は、保健師国家試験受験資格も取得可能)を得る事ができます。 初年度から現場教育を行い実習を多く経験できるため、卒業後、現場で働き始めた時に即戦力として動けるのが強みです。
看護専門学校には大学病院の付属や公立病院の付属も多くありさまざまな特色があります。また、大学や短大より学費が安い傾向にあり、中には大学の10分の1程度の学費で済む学校もあるようです。 学費をあまりかけられない・看護実務を優先したい・早く看護師になりたいという人にとってのニーズはとても高くなっています。
あなたに合った進路は?
専門学校と大学、進路で迷っている人も多いでしょう。 実際に現場で働く看護師の約4割程度は看護専門学校の卒業生ですので、看護専門学校を出てから看護師になるという選択が、今は一般的であるといえます。 一方、今後一層の高齢化で人口構造や疾病構造の変化と共に医療の高度化・専門化が進み、看護の質や内容にも大学レベルの知識や理論が必要になってくると言われており、現在は看護師の世界も高学歴化が進み、看護大学卒業者が増えてきています。
どこの業界でもありがちな傾向ですが、大卒の方が「給与面が少し高い」とか「師長などへの出世がしやすい」などということもあるようです。 大学と専門学校の学習内容や取得資格などの違い、それぞれの特徴を理解したうえで、「どこでどういう看護師になりたいのか」「どのように看護の仕事に関わっていきたいか」を思い描くことで、自分に合った方法が見つかるハズです。 3年制で学ぶにしても4年制で学ぶにしても、看護師として長く働き続けるには学生時代に十分な専門性と多くの知識を身につけることが重要になるのです。