白衣は同じでも仕事が違う。『助産師』と『看護師』の違い
助産師は女性がお産をするときのサポートや妊娠・出産・産後の女性と赤ちゃんに対して健康に関する教育や相談を行う専門家で、正常妊娠の妊婦であれば医師の指示がなくても処置をすることができます。 全国の助産師数は約35,000人で、その多くは病院(約62%)や診療所(25%)で働いています。
助産師になるためには、まず看護師免許を取得して、更に指定の助産師養成機関で1年以上の教育と実習を行い、卒業後に助産師国家試験に合格すれば助産師免許が取得できます。 (助産師は原則的に女性しかなれません。) なお、助産師指定養成校の認可を受けた看護大学では、卒業と同時に看護師と助産師の両方の国家試験を受けることが可能なカリキュラムも組まれています。 看護師の免許を取った後、更に専門的な知識を身につけるためのキャリアアップの資格のひとつとして位置づけられる事もあります。
助産師の仕事は、妊娠・出産から育児にいたるまでの母性に関する専門家として継続して母子に関わるのが主なので、助産師と直接関わる人や時期は看護師や保健師などに比べると限られてきます。しかし、最近では出産の介助だけでなく、妊産婦の体調管理やメンタルケア・不妊治療・思春期の悩みや更年期症状など、様々な時期の女性の心と体のケアを行う事などが多くなっています。
助産師の仕事内容
妊産婦の健康管理・妊娠中の生活指導(食事・運動)・産前教育・正常時の分娩・母子の体調管理(母乳指導)・育児相談・妊娠、出産への知識の啓蒙活動・家族計画始動・不妊治療・思春期の性の悩み・更年期症状等のカウンセリング
看護師との違いは?
業務上の違い
産婦人科などにいる助産師と看護師は、名札に明記していない限り一見するだけでは区別がつきませんが、助産師と看護師には業務上、明確な違いがあります。 法律上、看護師は『病気や怪我をしている人たちと出産したばかりの女性の看護および身のまわりの世話・介助・診療の補助などを行う』としています。 一方、助産師は『妊産婦に対する助産行為及び助産又は妊婦、出産したばかりの女性と新生児の保健指導を行う』となっています。
助産師は看護師資格を取得しているので、助産師にも看護師同様の業務を行う事ができます。助産行為は医師と助産師のみに限定されているため、助産師資格のない看護師には助産行為はできません。 看護師の業務に助産行為がプラスされているのが助産師というイメージでしょうか。 しかし、助産師が行える助産行為は、正常分娩のみに限られているので、例えば帝王切開や早産、赤ちゃんが逆子の可能性がある様な場合には助産師は助産行為を行うことはできません。
勤務先の違い
看護師の場合の勤務先は病院・各種福祉施設・企業・学校・保健所等多岐にわたります。総合的な病院ならば定期的に配置換えがあるため、さまざまな診療科を経験することができます。 一方、助産師は病院・診療所・助産院・学校などですが、助産師として働く場合にはそれしか行う事ができないので、他の診療科を経験することはできません。看護師の資格を取得していますから、産科などで看護師の行う業務を兼務する事は可能です。
給与面の違い
助産師と看護師では給料も若干違います。医療施設の種類や所在地で異なりますが、ほとんどの場合は助産師の方が年収は高いようです。助産師資格は看護師の勉強を行った上でさらに助産師としての知識を身につけているということになるため、年収の違いに繋がっています。 民間の病院の一般病棟で勤務する場合などでは助産師の資格があっても年収がアップするケースは少ないですが、大学病院や公的な病院になると一般病棟勤務であっても、助産師資格を持っているだけで基本給が上がることもあります。
助産師の転職
日本看護協会の看護関係統計資料(平成25年 看護関係統計資)によると、平成24年の看護職(保健師・助産師・看護師・准看護師)の就業者数は約150万人、そのうち、助産師就業者数は約35,000人で全体のわずか約2.4%に過ぎません。
「生命の誕生という現場で働きたい」「産科の専門知識を高めたいなどの理由から助産師の資格を取ってキャリアアップを図る看護師もいますが、逆に「産科では体験できないいろいろな世界を知りたいという理由で助産師から看護師へ転職する人もいます。それらの人の多くが、産科での分娩介助と一般の科で疾患を持つ人の看護では違う部分がかなりあり、助産師から看護師に転職する時は知識の入れ換えは必須であること・業務内容も変わることを頭に置いておくことが必要だと言います。また、助産師としてのブランクが長くなると医療の変化についていけなくなり、助産技術や判断力が低下することは否めません。
少子化で出産数そのものが減少し、産科だけの病院は少なくなり、産婦人科となっているところがほとんどです。産婦人科では出産だけでなく、さまざまな婦人科系の疾患を持つ患者さんもいるので、助産師も看護師としての知識や技術が必要となります。 看護師として働くにしても助産師の経験が生かせる場面もありますし、看護師の経験が助産師の業務に役立つことも多々あります。 看護師と助産師の2つの資格を持つのであれば、自身の技術や知識をさらに磨き、ステップアップができるのです。