必見、爪切り看護の注意点!過去には冤罪で逮捕された例も!?
健康な人が爪を切るのとは違い、看護における爪切りは簡単そうに見えて実は難しいものなのをご存じでしょうか。患者の持病によっては、爪の切り方が悪かったせいで足を切断……何ていうこともあり得るのです。
そこで、今回は爪切り看護の正しいやり方と注意点をご紹介します。
- 爪切り看護やフットケアの必要性とは?
- 正しい爪切り看護の方法
- 爪切り看護における注意点
- 爪切り看護に関するQ&A
この記事を読むことで爪切り看護に関する基礎知識を知ることができます。ぜひ、最後までお付き合いくださいね。
1.爪切り看護やフットケアの必要性とは?
まずは爪切り看護がどのようなものなのかをご紹介します。
1-1.爪切り看護とは
爪切り看護は、臥床患者(がしょうかんじゃ)や認知症患者など、自力で手足の爪をカットできない人に対して行われるケアのことです。中でも足の爪のケアは特に重要とされていることからフットケアと呼ばれ、手のケアとは区別されることもあります。
1-2.医療行為かどうか
爪切り看護は患者の状況によって医療行為になる場合とならない場合があります。平成17年に厚生労働省が出した「医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について」によると、次のような条件下であれば医療行為に当たりません。
- 爪そのものに異常がない
- 爪の周囲の皮膚にも化膿(かのう)や炎症がない
- 糖尿病等の疾患に伴う専門的な管理が必要でない
これらの条件を1つでも満たしていない状態で爪切り看護を行うと医療行為に当たる場合があります。判断に迷うときは、必ず医師に相談するようにしましょう。
1-3.看護師が行うことによる患者へのメリットは?
看護師は患者の体の状態を近くで見ていて、医師とも相談しやすい立場の人間です。そのため、爪周りの痛み・知覚・感覚・反射などを把握した上で、患者の状態に合わせた適切なケアができます。また、皮膚病の方や糖尿病の方などは爪の管理が非常にデリケートなので、皮膚科外来看護師・糖尿病看護認定看護師など、専門知識のある看護師が行うことでリスクを減らせることができるでしょう。
1-4.爪切り看護の重要性
1-4-1.感染症などの予防になる
爪が伸びたままだと割れやすくなり、感染症にかかる可能性が高くなります。糖尿病などを患っている方などは感染症が重症化しやすく、重症化すれば四肢の切断が必要にもなりかねません。さらに、爪が長いと爪の中にアカがたまりやすく不衛生です。爪白癬(つめはくせん)などにかかれば、爪の状態が悪化するだけでなく、周りに伝染させるリスクもあります。
1-4-2.四肢の状態管理ができる
また、爪の状態のチェックをすることで、四肢の健康状態をチェックすることにつながることも大切な点です。たとえば、下肢血流疾患が重症化すれば切断が必要となることもあります。早期発見し、軽傷のうちから、フットケアをしっかりと行うことで重症化を回避できる可能性が高まるのです。
1-4-3.事故の防止
たとえば、巻き爪による痛みで転倒したり、爪が伸びたままで鼻・耳・目などをかいてケガをしたりといった事故を避けることにつながります。特に、認知症の方は爪によるケガをしやすいので注意が必要です。
2.正しい爪切り看護の方法
看護における爪の切り方には正しいやり方があります。医療過誤を起こさないためにも、しっかりと押さえておきましょう。
2-1.事前に確認しておくこと
糖尿病など、一部の病気では専門的な知識がないと爪切りは非常にリスクがあります。ですから、一番大切なことは患者の持病を確認し、患者それぞれに合わせたケアをすることです。糖尿病などの場合は、医師の指導の下しっかりとした計画を作り、看護師たちで情報を共有しましょう。
また、爪のケアは事前に本人もしくは、本人と意思疎通ができない場合は家族の方に許可を得ておくことが大切です。爪の状態によっては、かなり深くまで爪を切り取らなければならず、知識のない人から見ると虐待のように見えてしまうことがあります。たとえば、2007年にフットケアをしていた看護師が、「患者の爪を剝がして虐待をしている」として逮捕される事件がありました。実際には水虫にかかった患者の爪をケアしていただけでした。適切なケアではありましたが、素人目には爪が剝がれて内出血しているように見えること、また、当時は医療関係者にもフットケアの重要性があまり知られていなかったこともあり、謝って逮捕されてしまったのです。しかし、その一方で、2004年・2011年には看護師が自身のストレス発散などの目的で患者の爪を剝がすという悪質な事件も起きています。患者や家族からすれば適切なケアでも、虐待ではないのかと心配になるのも無理はありません。ですから、患者やその家族に爪のケアの重要性を説明し、理解してもらうことが大切なのです。
2-2.そろえるもの
- 爪やすり
- 爪切り
- タオル、もしくはアルコール綿
- 不織布(ふしょくふ)、もしくはティッシュペーパー
これらのものは最低限必要となります。
2-3.爪切りの手順
2-3-1.同意を取る
まずは患者やその家族に爪を切ることの説明を行い、同意を得ます。できれば口頭だけでなく、同意書を作成してサインをしてもらいましょう。
2-3-2.手浴や温タオルで爪の汚れを取り、爪を柔らかくする
年配の方などは特に爪が硬く割れやすいので、爪を柔らかくしておくことで爪が割れるのを防ぎ、切りやすくできます。爪が特に硬い方の場合は入浴後に行うとよいでしょう。また、汚れたまま爪を切ると感染症のリスクがあるので、しっかりと汚れを取りましょう。
2-3-3.切りやすい体勢を作り、丁寧に切っていく
まず不織布・ティッシュペーパーなどを手の下に敷き、指間をしっかりと開きます。次に、爪切りを利き手に持ち、爪のカーブに合わせて切っていきましょう。また、深爪するのは危険なので、2ミリメーターほどは爪の白い部分を残すようにしてください。
2-3-4.爪やすりをかける
爪を切ると、断面がザラザラしています。このままだと服の繊維などに引っかかりやすいので、爪やすりをかけて断面をなめしましょう。なお、爪やすりはめったやたらにかけるのではなく、一定方向に向かってかけるのがコツです。
2-3-5.仕上げに爪の汚れを落とす
爪の破片などが残っていることがあるので、最後に温タオルを使って爪をキレイにしたら完了です。
3.爪切り看護における注意点
この項では爪切り看護を行う際に注意しておきたい点をご紹介します。
3-1.セルフジャッジをしない
前述したように、ただの爪切りも時として患者に大きな悪影響を及ぼすことがあります。患者によってやっていい爪切りの仕方とやってはいけない爪切りの仕方があるので、絶対に自分の判断で行わないようにしましょう。
3-2.同意書にサインをもらう
できる限り同意書にサインをもらうようにしましょう。同意書のあるなしで後に起こりうるトラブルを未然に防ぐことができます。
3-3.傷を付けたり深爪になったりしないように気を付ける
傷を付けると感染症になるリスクがあります。爪のケアを受ける人は大きな病気にかかっている場合も多く、ちょっとした感染症が生死にかかわりかねません。傷が付かないように注意しましょう。患者が嫌がったり暴れたりする場合は無理には行わず、落ち着くのを待ったり周りに協力してもらったりすることが大切です。
4.爪切り看護に関するQ&A
最後に、爪切り看護に関してよく寄せられる質問とその回答をご紹介します。
Q.巻き爪や陥入爪(かんにゅうそう)の患者の爪を切るときの留意点を教えてください
A.巻き爪や陥入爪の場合は通常より浅めに爪を切りましょう。また、角を切りすぎると悪化する可能性があるので、スクエアカットを心がけてください。
Q.フスフレーゲとは何でしょうか?
A.ドイツ式フットケアのことです。フットケア専用のフレーザーと呼ばれる器具を使って処置を行います。
Q.看護師以外にはどのような人が爪のケアを行うのですか?
A.看護師・理学療法士・作業療法士・義肢装具士・介護士などが爪のケアを行います。
Q.爪切り看護に関する資格はあるのでしょうか?
A.国家資格はありませんが、民間資格にフットケア指導士があります。
Q.足の爪の状態を良好に保つためには何が必要でしょうか?
A.正しい爪の切り方をすることはもちろんですが、インソールなどを使ってシューフィッティングを行うことが大切です。合わない靴を履いていると巻き爪になりやすく、爪のケアがしにくくなります。また、糖尿病患者などは靴擦れでも重症化することがあるので、この意味でもシューフィッティングは重要です。
まとめ
今回は爪切り看護に関する基礎知識をご紹介しました。爪切り看護は患者の状態によっては必要不可欠なケアですが、安易な考えでやると感染症などを引き起こすリスクがあります。セルフジャッジはやめ、医師などから指示をもらってから正しい方法で行いましょう。