看護師のキャリアパスを描こう。特定の21分野におけるスペシャリスト『認定看護師』
仕事上で経験やスキルを積みながら自分の目標・昇進・昇給・キャリアアップなどを具体化、明確化するキャリア設計をキャリアパスといい、どんな職種においてもそれぞれのキャリアパスを設定することは大事なことです。
看護職も同様。看護師としての経験を重ねていく中で、3年後5年後の自分のキャリアを描くキャリアパスを設定することは目標意識や技術・知識を高めていくことにつながっていくのです。
看護師のキャリアパスとしては、看護部長や看護師長などの管理職として病院全体のマネジメントに携わること・ジェネラリストとして幅広い分野で患者ケアを行うこと・専門分野のスペシャリストとして特定の分野を極めていくことなどがあります。 専門分野を極めるスペシャリストのひとつである『認定看護師』についてご紹介します。
特定分野での高度な知識とスキルを有する臨床現場における看護のエキスパート
認定看護師制度は日本看護協会により1995年創設された資格制度で、看護全般というよりもある特定の専門分野の看護分野におけるスペシャリストを養成する制度で、認定看護師数は現在、全国でおよそ1万2000人(2014年現在日本看護協会認定部)が登録されています。
認定看護師には『実践』『指導』『相談』の3つの役割があります。
『実践』は、患者個人やその家族、入院患者等に対して特定の分野における高度な看護知識と熟練した技術によって、質の高い看護ケアを提供すること。
『指導』は、看護ケアを通じて看護師や医療従事者に専門的な指導及び知識を提供すること
『相談』は、患者さんの問題解決の手助けのために看護師や医療従事者に対し、コンサルテーションを行うこと
この役割は各分野とも共通で、看護ケアの広がりと質の向上を図ることに貢献します。
認定看護師になるには
認定看護師の受験資格は看護師・助産師・保健師の国家資格のどれかを有し、臨床での実務経験が5年以上で、そのうち3年以上は自分が希望する専門分野の臨床経験が必要です。臨床経験年数が満たなければチャレンジはできません。そのうえ、認定看護師教育機関(全国の看護系大学や看護協会・病院など59機関)による教育課程(6ヶ月以上、615時間以上)を終了し、認定審査に合格することで認定看護師として活動することができるのです。
また、認定看護師はそのレベルを保つために5年ごとの認定更新制になっていて、この更新審査にも受験資格があり、過去5年間の臨床実務などが問われます。?ただ資格を持っているだけで実務実績がない場合には資格は失効されてしまいます。
社会的ニーズの高い認定分野の種類
現在の認定分野は21分野で、社会的なニーズが考慮され様々な種類の分野が新設されてきました。特に、今や人に1人がガンで亡くなるというほど、罹患率が高いガン関連の分野(「化学療法」「放射線療法」「がん性疼痛」「乳がん」)や「糖尿病」「透析看護」「認知症看護」「皮膚・排泄ケア」「摂食・嚥下障害看護」「訪問看護」「不妊症看護」など、超高齢化や不妊など社会的ニーズの多い分野が揃っているのです。
病院側も積極的にバックアップ
認定看護師の活動の場は、分野や病院の方針によっても異なりますが、高度化・複雑化する医療現場において、専門的な知識を有する看護師の役割がますます重要となっています。病院側でも資格取得をバックアップする制度や、なかには認定資格の取得中の期間を「研修」扱いにして給与を全額支給してくれたり、教育費用を出してくれるところもあります。 特に「皮膚・排泄ケア」「緩和ケア」「がん化学療法」「糖尿病看護」等の分野では認定看護師による看護ケアで診療報酬が加算される事もあり病院側も積極的に取り組んでいます。
看護師としてのキャリアパスを描く時、まずは自分の人生設計を見直す必要があります。資格取得のためには経済的にも精神的にも大きな負担がかかります。家庭を持っている場合、なかなか踏み出せない事情もあるでしょう。 しかし、看護師のスペシャリストとして特化した分野で第一線を走り続けたいと思う人にとっては、認定看護師の資格が強い武器となることは間違いありません。