看護師のキャリアパスを描こう。特定11分野に於いてより卓越したスペシャリスト『専門看護師』
看護師のキャリアパスの一つの選択肢でもある特定の分野を極めるスペシャリストには、『認定看護師』や『専門看護師』があります。どちらの資格も看護ケアの質の向上、保健医療福祉や看護の発展に貢献する重要な資格です。
特定分野での卓越した看護技術とマネジメント能力を
有する看護のエキスパート
専門看護師制度は日本看護協会により1996年創設された資格制度で、ある特定の専門分野で卓越した看護実践能力を有する看護師を養成する制度で、現在は全国でおよそ1,200人程度(2014年現在日本看護協会認定部)が登録されています。
専門看護師には『教育』『相談』『調整』『実践』『倫理調整』『研究』の6つの役割を担っています。 『教育』は専門分野におけるケアの向上のために看護職に対する研修会・研究指導及び講演会等での多様な教育活動を行うこと
『相談』は、専門分野において患者の問題解決の手助けのために看護師や医療従事者に対し、コンサルティングを行うこと
『調整』は専門分野において必要なケアが円滑に行われるために、保健医療福祉従事者の間のコーディネートを行うこと
『実践』は、専門分野における患者個人やその家族及び集団に対して直接的な看護を実践すること
『倫理調整』は、専門分野において患者個人や家族及び集団の権利を守るために、倫理的な問題や葛藤の解決をはかること
『研究』は、専門分野における専門知識及び技術の向上並びに開発をはかるために実践の場における研究活動を行うこと
この6つの役割は各分野とも共通で、水準の高い看護ケアを効率よく提供することで保健医療福祉や看護学の発展に貢献します。
専門看護師になるには
専門看護師の受験資格は看護師・助産師・保健師の国家資格のいずれかを有した看護系大学院修士課程修了者で、日本看護系大学協議会専門看護師教育課程基準が定める所定の単位の取得と、臨床での実務経験が5年以上、そのうち3年以上は専門看護分野での臨床研修が必要になります。
看護慶大学院の修士課程の修了が必須ですから、看護系の専門学校や大学の卒業だけでは専門看護師の受験資格を持つことは出来ません。また、3年間の専門看護分野での臨床経験のうち6ヶ月以上は看護系修士課程修了後の実務研修でなくてはなりません。
それらの条件をクリアし、認定審査に合格することで専門看護師として活動することができるのです。 また、専門看護師はそのレベルを保つために5年ごとの認定更新制になっていて、この更新審査にも受験資格があり、過去5年間の臨床実務や研究業績及び研修業績等が問われます。?ただ資格を持っているだけで自己研鑽の実績がない場合には資格は失効されてしまいます。
専門看護師の11の看護分野
分野現在の認定分野は、「癌看護「精神看護」「地域看護」「老人看護」「小児看護」「母性看護」「慢性疾患看護」「急性・重症患者看護」「感染症看護」「家族支援」「在宅看護」の11分野で、専門看護師の看護分野認定看護師の分野(「皮膚・排泄ケア」「緩和ケア」「認知症」「がん化学療法」等々)と比較すると、病名や病状というよりも幅広く 「がん」 「精神」 「老人」「母性」 という環境や状況で分類されています。
「在宅看護」が専門看護として分野特定されたのは2012年、超高齢化社会の現状を踏まえたもので、今後、他の分野でも専門看護師の必要性が出てきた場合は新しく専門看護分野として登録される事も考えられます。
専門看護師と認定看護師の違い
専門看護師も認定看護師も特定の分野を極めるスペシャリストという点では似ていますが、求められている能力・知識・技術・ポジション・業務内容には違いがあります。認定看護師の看護分野は「皮膚・排泄ケア」「緩和ケア」「認知症」「がん化学療法」等々かなり焦点を絞ったより細かい分野に分かれていて、その特定の分野に関するエキスパートでケアしていく、より臨床に近いといえるでしょう。
一方、専門看護師はある特定分野における深い知識・卓越した看護技術はもとより、組織を横断しながら調整(マネジメント)することの業務が多くなり、施設内の活動は広範囲にわたります。 また、看護職に対する教育的役割・倫理的な問題や葛藤の解決をはかる倫理調整、技術向上をはかるための研究活動も専門看護師の役割です。
また、認定看護師は人事異動等で他の科に移動する事もありますが、専門看護師の場合は移動がなくずっと同じ科に属する事が多いようです。職を辞めるまでずっと同じ科で働くということになります。
専門看護師の資格取得に関しては、条件も内容もかなりハードルが高いと言えます。
また、資格取得後は、病院で働きながら後輩看護師の育成や研修などを実践する人や、アカデミックな方面に進む人もいます。 自分のキャリアパスを描く時、自分がそれを目指す理由や目的などを整理・理解し、その上で何をするのかをしっかり考える事が大切です。これからの医療の発展と共に各分野における看護のスペシャリストはますます必要になるのです。