腰痛に悩んでいる看護師さんにオススメ。今すぐ試したい腰痛予防3つの対策
医療関係団体や研究者などによる看護職員の腰痛に関する実態調査では、各調査対象の6割~8割の看護師が腰痛に悩まされているという結果が出ており、腰痛が重症化すると仕事だけでなく日常の生活にも支障をきたす事になります。看護師にとって腰痛は非常に身近で重大な問題なのです。
腰痛が起こる要因は、看護師の仕事における腰部関節への負担・ストレス・生活習慣などが関係しています。特に、体位交換・中腰での処置・車椅子などへの移乗など、看護師が日々行っている業務は、腰椎や腰部筋へ過度の負担がかかる業務が中心といってもよいほどで、調査によると看護師が腰痛の原因となる中腰状態でいる時間は業務時間全体の8割にものぼるという結果もあるのです。
バイタルサインの測定から注射などの様々な処置、患者さんとのコミュニケーションやトイレ・入浴・ベッドや車椅子への移乗時の介助など多くの業務が看護師の腰に負担をかけています。 その上、夜勤勤務などで長時間緊張した状態が続き、疲労とストレスが蓄積された状態での腰への負担は想像以上のものがあります。
職場でできる腰痛予防:介助環境の改善
日々の業務の中でなるべく腰に負担をかけないよう改善できることはあります。例えば、多少時間がかかっても処置をするたびにベッドの高さを調整する、負担のかかる介助では必ず二人で介助するなど少し気をつけるだけでも効果はあります。また、予め患者さんの体格や介助度をスコア化し看護師が腰を痛めるリスクを評価し、介助体制を整えることも大切なことです。
職場でできる腰痛予防:セルフケア
腰痛がひどくなってしまったら完治させることはなかなか難しいことなので、正しい姿勢を保つ・骨盤を安定させる・仕事の合間に簡単にできるストレッチを行うなど、自分にできる予防対策を行うことが大切です。
- サイズに合った疲れにくい靴・冷えない靴下を選ぶ
- 盤ベルトなどを着用する
- 仕事に入る前や休憩時にストレッチを行う
職場でできる腰痛予防:ボディメカニクスの実践
ボディメカニクスとは、骨格・筋肉・内臓などを中心とした身体の動きのメカニズム(身体力学)をいい、自然な身体の動きや自然の法則(重心・摩擦・テコの原理・回転力)などを有効に活用することで、患者さんや看護師の身体的な負担を軽減し、安全で安楽な動作が可能になります。
看護で用いられる介助技術の原理原則として、基礎看護教育でもボディメカニクスの知識と技術の習得が行われていますが、看護現場では実践的に活用されていない事も多いようです。
ボディメカニクスの基本
- 支持基底面(身体の床面に接している部分を直線で結んだ広さ)を広くとる
- 片足を斜め前方に置く
- 重心の位置を低くする
- 重心を移動しやすい姿勢を取る
- 重心を近づける
- 対象を動かす時は、テコの原理を使う
- 摩擦を低減するために対象の身体を「小さくまとめる」ようにする
- 大きな筋群を使う
看護師は介助を行う際、自分の両足を広げて(支持基底面積を広くとる)、重心を下げて安定した姿勢を取ります。人間の重心は立った状態でほぼ骨盤の内側付近にありので、看護師は重心を常に意識しながら、患者さんになるベく近づいてお互いの重心を近づけます。状況に応じて患者さんにはできるだけ小さく身体をまとめてもらいましょう(摩擦の低減)。
移動・起き上がりなど力を加える時には腕や腰の力だけではなく全身を使い、テコの原理や回転の力を利用します。介助するための空間はできるだけ広く取り、必ず患者さんに声掛けをしながら行ないます。患者さんが自らする動作をしっかりと伝えることで相手の内面の力を引き出すためです。
ボディメカニクスの活用おいては患者さんが看護師に身体を任せられるだけの絶対的な安心感や信頼感が必要ですし、誤った方法では効果はありません。正しい知識と技術の習得が必要ですが、ボディメカニクスを正しく実践した結果、看護動作における腰痛の軽減や前傾角度の減少が認められています。
超高齢化社会に伴い高齢者の看護・介助も増える現場で、看護動作における身体負荷は益々増加することが予測されます。看護師の腰痛予防対策として日々の環境改善やセルフケアに加え、介助技術の原理原則であるボディメカニクスに立ち返った看護動作を実践してみましょう。