かつて「看護士」と呼ばれた男性看護師の現状
看護師と看護士の違いは?
看護師と看護士、読み方はどちらも「かんごし」ですが意味は違います。以前は女性看護師を「看護婦」、男性看護師を「看護士」と区別していましたが、2002年3月施行の「保健婦助産婦看護婦法の一部を改正する法律」により、男女の区別のない統一された「看護師」の名称に変更されています。
かつて「看護士」と呼ばれていた男性看護師の就業者数は約86,000人。最近では病院などで男性看護師さんの姿を見る様になったとはいえ全体数(約1,445,000人)からみれば6%弱、看護師の世界は圧倒的に女性の世界なのです。
男性看護師が多い職場とは?
以前から男性看護師が配属されやすいのと言われているのが精神科です。患者さんの精神疾患による暴力に対し力ずくで抑えなければならないケースも多いことから、力がある男性看護師が必要とされています。
また一般病棟でも、寝たきりの高齢者の入浴介助・排泄介助など、体力が要る場合では男性看護師は非常に頼りにされます。男性患者の中には女性看護師に対して強くあたる人もいますし、「女性に排泄処理などの介助をされたくない」という人もいます。男性看護師なら男性患者の気持ちを汲みながら対等な立場で接することができます。
小児科などでも子どもが男性からの注意や指導をよく聞くという事で男性看護師を積極的に採用するケースも増えており、男性看護師が活躍できる場所は徐々に広がっているのです。
男性看護師ならではの悩みは?
男性看護師の同僚や上司が少なく、相談できる人がいない
看護師の世界ではまだまだ男性看護師はマイノリティで、大半の男性看護師が働く勤務先には同僚や後輩・上司にも男性看護師がいないという事も多く、仕事上で相談したい事・悩み事があった時に相談できる人がいなかったり、「自分は必要なのかなどと男性看護師の存在意義を否定的に考えてしまう、また「特定の女性看護師と親しく話したら変な噂を立てられた」「何気ない言葉がセクハラと解釈されてしまった」など女性看護師との人間関係など男性看護師ならではの悩みは多い様です。
キャリアアップ・キャリアプランのモデルケースが少ない
看護師のキャリアアップとしての選択肢は幾つかありますが、男性看護師が看護師長や看護部長のような役職に就き出世していくのは決して楽な環境ではありません。また、専門的な分野を経験して看護師としてのキャリアやスキルの幅を拡げたいと思っていても医療現場によっては体力を使う仕事に偏重されるなど男性看護師であることが制約になる職場もあり、キャリアアップの道を形成していけない悩みを抱えていることもあります。
女性看護師に見られるように結婚や出産で一時離職するケースはほとんどありませんが、男性は結婚し家庭を持てば家計を支えていかなければならないという意識が強く、経験や実績に伴いより高い給料を求める傾向があります。自分の将来像や目指すキャリアがイメージできない事に不安を覚える男性看護師も多いのです。
求人先が限定されている
看護師は需要が多く転職先には困らないと言われていますが、看護師=女性というイメージが根強く、求人票に記入がなくても女性の看護師しか雇う予定がないという病院も多く、問い合わせても男性看護師であることを理由に断られるという事もあります。人間関係の行き詰まりや将来への不安から転職しようとしても転職先が見つからず、誰にも相談できないまま結局離職してしまう男性看護師もいるようです。
女性社会の中に男性がいる事で物事の考え方やその場の雰囲気が変わる事もあります。力仕事だけでなくケアする精神的な面においても男性ならではの視点や考え方が必要なのです。男性看護師が増えることが様々な方面にプラスの影響を与えていくと予想され、男性看護師への期待も活躍の場も今後ますます広がっていくでしょう。