
機器操作のルーティンワークではない透析看護の仕事とは
全国の慢性透析患者数は年々増加し続け、2013年末で31万人を超えており、国民の約420人に1人が透析療法を受けていることになり、そのほとんどが透析室をもつ病院やクリニックでの血液透析を受けています。
人工透析は腎不全などで低下した腎機能の代わりの役割を果たす治療で、腎機能の程度に応じて週数回通院し、4~5時間の透析を受けることになります。患者さんの多くは長期間にわたって透析治療を続ける必要があり、身体的苦痛だけではなく精神的苦痛も伴う大変な治療なのです。
透析室での看護師の仕事
透析医療の現場では医師・看護師・臨床工学技士・管理栄養士等さまざまな専門家が患者さんを支えていますが、 透析室で働く看護師の主な仕事内容と役割は以下の様なことです。
- 透析患者さんへの説明
- 透析医療機器の準備及び操作・片付け
- 透析のための穿刺・抜針・止血
- 透析中のバイタルチェック・健康状態のチェック
透析室の看護師の仕事として日々進化する透析医療機器をミスなく操作することは基本ですが、最も重要なのは『穿刺・抜針・止血』です。患者さんの腕の『シャント』と呼ばれる穿刺するポイントへ針を刺すことは簡単ではありません。長期間にわたり週に何度も針を刺してきたためにシャント自体がもろくなっている患者さんも多く、慎重に行わないと血管を損なうこともあります。患者さんにできるだけ苦痛を与えず、透析療法にマイナスなイメージを抱かせないためには看護師としての高い技術が求められます。
また、透析患者さんはほかの病気を併発していることも多く、透析の間に体調が急変することがあるため、機器によるモニタリングだけでなく患者さんの様子を常に観察し、声掛けをするなど意識の変化がないか健康状態を確認する必要があります。
透析看護の特徴
透析室は一般病棟とは違い、基本的に見通しがきくワンフロアになっている事が多く、患者さんに目が届きやすい反面、個人のプライバシーが守られにくく、スタッフの会話や行動などがまる見えになってしまう事もあり、細かいトラブルが起きやすい環境です。 しかも、透析機器がずっと動いているので常に緊張感があります。
また、長年にわたり継続的に治療を受けており看護師以上に知識が豊富な患者さんも多く、配属されたばかりの看護師に対しては特に厳しい方もいます。
しかし、週に数回患者さんと顔を合わせて、長期間状態を看るようになると患者さんとのつながりは強くなり、心を開き、いろいろな事を話してくれるようになります。患者さんの人生に寄り添える看護は一般病棟にはない透析看護特有のものです。
また、日勤帯で働けるのも魅力のひとつです。
透析の日程は予定されていて緊急で行うということはほとんどなく基本的には日勤になります。最近では夕方まで受け付けを行ったり、土日でも透析が可能な医療機関もあるためシフト制になる可能性はありますが、病棟勤務のような夜勤・残業・休日出勤の可能性は低いと言えます。結婚や出産を機に日勤帯で働ける職場を探している看護師にはとっては都合の良い条件だといえるでしょう。
透析のスペシャリストとしてのスキルアップ
かつては透析室の仕事はルーティンワークになりがち・・・とも言われていましたが、現在の透析治療は、合併症対策や食生活の管理・指導、メンタルケアなど患者さん全身の医療に関わる仕事として非常に奥が深く専門性の高いやりがいのあるものです。
透析室など透析治療の現場で数年間経験を積み、透析治療に関する専門知識を学び透析関連資格を取得することも可能になります。
- 透析看護認定看護師(日本看護協会が認定)
- 透析技術認定士(財団法人医療機器センターが認定)
- 透析療法指導看護師(日本泌尿器科学会・日本移植学会・日本透析医学会・日本腎臓学会・日本腎不全看護学会が認定)
資格を取得することにより、患者さんの肉体的精神的な負担を軽減させる総合的なケア、患者さんが安心して治療に専念できる環境づくりなどの透析治療に関する高い技術や知識が身につき透析のスペシャリストとして専門性を高めていくことができます。