法改正で意識が変わる?看護師の有給消化事情
雇用条件には明記されているのに、なかなか申請し難いのが「有給休暇」。日本の労働者の有給休暇の取得日数は平均8.6日、取得率は50%弱に留まっています。
慢性的に人手不足な看護師も同様で、「有給なんて取れる雰囲気じゃない」「有給どころか普通の休日を翌月に繰り越すことさえあるというのが現状です。
『看護職員の労働実態調査(2013年)』によると、有給休暇の取得日数は平均8.86日で、「10日以上」は44.5%、完全消化と考えられる「20日以上」は5.6%しかありません。一方で、「5日以下」が31.4%で、全く取れなかった(0日)も3.3%という結果が出ています。
今年、厚生労働省は企業に対して社員の年5日分の「有給休暇」を取得させるよう義務付ける方針の検討に入り、早ければ2016年4月からの施行を目指しています。
看護師の有給休暇の実態
有給休暇は入職から6ヶ月間の勤続期間があると10日間の有給休暇を付与することが法律によって義務付けられています。初年度の有給休暇として10日間は誰もが持っており、1年間ごとに有給休暇が付与され、保持する有給休暇が上限をこえてしまうと、職場側で保持できない日数分を捨てたり、買い取るなどの対応が行われます。
日数的には、半年以上勤務した時点で10日間の有給休暇が付与され、その後毎年1年ごとに1日ずつ増加していき、勤続期間が6年半以上となった場合には年間で20日間の有給休暇を取得できることになっています。
しかし、一定の条件として勤務日数の80パーセント以上出勤していなければならず、勤務日数が下回ると取得できません。 看護師が有給休暇を申請した場合、雇用側(病院側)は正常な運営を妨げる恐れがある場合に限って取得日を変更する権利(時季変更権)がありますが、基本的に看護師が希望する期日に与えることが原則であり、日数制限や理由の限定などは法令に反する行為とみなされます。
しかし、ぎりぎりの人数でシフトローテションを組んでいる現場も多く、実際には「希望休暇は1ヶ月半前までに申請する・希望休暇は3日のみ・同日に3人までしか休めない・夜勤のシフト日には申請できないなどの暗黙の決まり事がある職場もあり、希望が通らないのも現状です。シフト作成者の考え方やそれまでの慣習、同僚・先輩からの批判などにより「有給休暇がしっかりと取れない」「申請することすらできない環境下で有給未消化のまま1年が過ぎてしまう看護師も多いのです。
高い有給消化率にも裏がある!?
消化できずにたまった有給休暇を病院の都合に合わせ何日か消化させて有給休暇の消化率を高くしている職場も実際にはあります。「有給休暇消化率90%以上」などの記載を見かけますが、中には自分が使用したいタイミングでは使えず、病院側の都合でしか有給を使えないというケースも珍しくありません。
全く希望していない研修会やセミナーなどへの参加を強制され、参加日に有給休暇を使われたり、スタッフに余裕が出たため当日出勤したのにもかかわらず、急に「今日、有給休暇をあげるから帰っていいよと強制的に有給休暇を与えられたりなどのケースもあります。
希望による有給消化率を上げるために
有給休暇の時期を明確にする
有給を使いたい日が忙しい時期だと希望はなかなか受けいれてもらえません。事前にいつ頃の時期なら有給を使う事が出来るのかを上司に確認しましょう。確認した時点でその週に有給を使う事を伝えておくのがポイント。そうすれば仮にその週が忙しくなったとしても、前もって話した事で有給を使いやすいです。
また、コンサートなど数ヶ月先の予定で有給を使いたい時は、有給を取りたい日が分かった時点ですぐに申請しましょう。数ヶ月先のことなので了承を得られやすく、手続きをしてしまえば当日に現場が忙しくても取りやすくなります。
現場で協力し有給消化をしやすい環境を作る
有給をとりにくい大きな理由の一つが周囲への影響で、忙しい時期に自分が有給を取ると周りに迷惑がかかると思って言いだせない事もあるでしょう。それは他の看護師も同じです。他の看護師と有給消化について話し合い、事前に有給希望日などを調整するなど、自分たちで有給を取りやすい環境作りをしていくことが大事です。
有給消化の義務づけという今回の法改正の施行は、有給を取りやすい職場の雰囲気になる事をめざしていますが、これを機に、本来の権利である有給休暇が正当に消化でき、看護師の休日・休養がしっかりと保障され就業環境の向上につなげるために看護師同士が協力しあっていきましょう。