バイタルサインとはどんなもの? 基準値や正常値を外れるとどうなるの?
「バイタルサイン」という言葉を聞いたことがある方も多いでしょう。看護学校の授業でも習うことです。しかし、看護師として働いていると「バイタルサイン」について深く考える機会も少ないでしょう。
そこで今回は、改めてバイタルサインについてご説明します。バイタルサインは、年代によって基準値や正常値が違うものもあるのです。医療従事者ならば知っていて当たり前のことですが、普段から意識していないととっさに数値が出てこないこともあるでしょう。ベテラン看護師の方もこの記事を読んで、バイタルサインの復習をしてみてください。
- バイタルサインとは?
- バイタルサインのチェックの仕方は?
- バイタルサインに異常が起きた場合は?
1.バイタルサインとは?
まず始めに、バイタルサインとは何かということをご説明します。これを知っていると、素人でも役に立つことが多いのです。
1-1.バイタルサインの意味は?
バイタルサインの「バイタル」とは英語で「命にかかわる」「生命維持(せいめいいじ)に必要な」という意味です。つまり、バイタルサインがあればその人が生きている証(あか)しとなります。映画やドラマで、負傷者の脈拍などをチェックしているシーンを見たことがある方もいるでしょう。ああやってバイタルサインをチェックしているのです。
1-2.バイタルサインとは?
バイタルサインとは、
- 血圧
- 呼吸
- 脈拍
- 体温
の4つです。
これに意識レベルを加える場合もあるでしょう。この4つは健康管理にも欠かせませんね。体温が高ければ病気を疑いますし、血圧が高かすぎても低すぎても治療の対象になります。呼吸や脈拍は普段あまり意識することはありませんが、脈拍が乱れる場合は「不整脈」という病気の可能性があるのです。
また、意識がなく呼吸が浅かったりすれば処置をしなければ命が危険なこともあるでしょう。意識レベルとは、呼びかけや刺激に対してどれだけ反応があるか確かめることです。たとえ熟睡していても呼びかけたり痛みを与えたりすれば、何らかの反応があります。全く反応がない状態というのは、たとえ外傷がなくても命に危険がある状態です。
1-3.バイタルサインを知っているとなぜ便利なの?
人はけがや病気になると呼吸や脈拍、血圧などが乱れます。病気やけがの中には、外見に何の変化も現れないものもあるので、バイタルチェックが大切になるのです。
たとえば、脳出血が起こると、人は意識を失いこん睡状態になる場合があります。しかし、外見に全く変化はありません。「たんに寝ているだけ」と勘違いされることもあるでしょう。ですから、意識レベルや脈などを調べて病気かどうかを確かめるのです。
また、「なんとなく気分がすぐれないけれど、病気だろうか?」という場合も、バイタルサインをチェックすれば健康状態がある程度分かります。さらに、バイタルサインは医療器具が全くない状態でも、ある程度把握できるのです。大規模な災害が起こった場合、すぐに処置が必要な負傷者を見分ける手段としても用いられます。
2.バイタルサインのチェックの仕方は?
では、バイタルサインはどのようにチェックすればよいのでしょうか? この項では、バイタルサインのチェック方法や正常値・基準値をご説明していきます。
2-1.体温
体温の正常値は36度~37度とされています。現在では、これ以下の方も増えているそうですが、35.5度を下回る方はめったにいないでしょう。子どもは大人よりも若干(じゃっかん)体温が高く、37度前半までが正常値といわれています。高齢者になっても体温は極端に下がることはありません。しかし、体温を感じる感覚が鈍くなっていますので熱が出ているのに気がつかない、という高齢者もいます。
また、熱が出た場合は、1日の推移(すいい)によってある程度病名が分かることもあるでしょう。熱は体温計で測るのが一番ですが、熱があるかどうかの確認は額に手を当てても行えます。
2-2.脈拍と血圧
脈拍と血圧は、個人差があります。また、年代によって基準値も変わってくるでしょう。
脈拍の正常値は、
- 老人 60~70回/分
- 成人 60~80回/分
- 思春期 70~80回/分
- 学童時 80~90回/分
- 乳児 120前後回/分
- 新生児 130~140回/分
となっています。脈は手首の内側や、首筋、股(また)などで測ると分かりやすいでしょう。血圧の正常値は130/85mmHgとなっていますが、140/90mmHgまでは正常高血圧ということになっています。年をとるにつれて正常値から外れる人が多くなってくるでしょう。
ちなみに、血圧は高血圧ばかりが問題になっていますが、けがなどで出血している場合は血圧が低くなりすぎても命の危険があります。脈拍は時計があればある程度正確に測れますが、血圧を測るには、血圧計が必要です。
2-3.呼吸
呼吸は、新生児ほど早く成人になると16~20回/分で落ち着いてきます。恐怖や興奮で呼吸が早くなることもありますが、遅すぎても早すぎてもよくありません。また、無呼吸といって呼吸が止まったり、チェーンストーク呼吸など脳に酸素欠乏が起こっているときに発生したりする独特の呼吸があります。
さらに、心不全を発症すると横になると呼吸が苦しくなることもあるのです。つまり、呼吸は早さだけでなく呼吸の仕方や呼吸の姿勢もチェックする必要があるでしょう。
2-4.意識レベル
意識レベルは、呼びかけたり皮膚をつねったりして反応を見ます。命が危険な状態ほど、強い刺激を与えても無反応なことが多いでしょう。
3.バイタルサインに異常が起きた場合は?
現在は、訪問看護など病院外で看護を行うケースも増えています。訪問看護先で患者の様子がおかしい場合は、バイタルサインをチェックしましょう。呼吸や脈拍などどれかひとつでもおかしい場合は、救急車を手配してほかのバイタルサインもチェックします。
病院でバイタルサインに異常が見られた場合は、すぐに担当医に連絡しましょう。家庭でも、「家族の様子がおかしい」という場合は、脈拍や呼吸、意識レベルなどをチェックしてください。外傷はないのに呼びかけに応じない場合は、脳出血などを発症した恐れがあります。すぐに救急車を呼びましょう。
その際に、バイタルサインの異常を救急隊に知らせると、病名が判明しやすくなるかもしれません。また、バイタルサインをいつでもチェックできるように家庭には、体温計や血圧計をそろえておくと便利でしょう。
おわりに
今回は、バイタルサインについていろいろとご説明しました。
まとめると
- バイタルサインはその人が生きている証(あか)しである
- バイタルサインが乱れると、病気の可能性がある
- バイタルサインが弱まれば、命に危険がある
- バイタルサインをチェックすればその人が健康であるかどうかが分かる
ということです。
医療技術の進歩により、検査さえすれば、さまざまな病気が分かるようになりました。しかし、「今すぐに命の危険があるかどうかをチェックしたい」という場合は、バイタルサインのチェックが最も有効です。ですから、訪問介護の場合は体温計や血圧計を持参することも多いでしょう。
また、子どもの健康チェックにもバイタルサインを利用すると便利です。子どもは熱が出ても平気な顔をしている場合があります。だからといって、何もしなければ体調は悪化してしまうでしょう。子どもを持ったら最低限体温計ぐらいは家に常備しておいてください。高血圧など血圧に異常が出る病気を発症した場合は、血圧計を家に常備しておくと便利です。