化学療法の看護について知りたい。がん化学療法認定看護師になるには?
化学療法とは、がん治療の一種です。
薬剤が進歩して昔よりは体に負担が少なくなりましたが、それでも副作用に苦しむ患者さんは少なくありません。
そこで、今回は化学療法の看護についていろいろとご説明します。
通常の看護との違いや注意点もご紹介しましょう。
さらに、がん化学療法認定看護師の職務や認定される方法についてもご説明します。
がん患者の看護をする機会が多い方や認定看護師を目指している方は、ぜひこの記事を読んで参考にしてみてください。
- 化学療法とは?
- 化学療法の看護とは?
- がん化学療法認定看護師とは?
- おわりに
1.化学療法とは?
化学療法とは、がん治療の一種で抗がん剤を使ってがん細胞を死滅させたり小さくさせたりするものです。
英語では「ケモセラピー」というため、それを省略して「ケモ療法」といわれることもあります。
化学療法が単独で行われることもありますが、手術療法や放射線治療と一緒に行われることも多いでしょう。
抗がん剤はがん細胞も攻撃しますが、正常な細胞も一緒に攻撃してしまいます。
ですから、吐き気や食欲不振、貧血などの副作用が出る方も多いでしょう。
医学の進歩により、毎年のように副作用がより少ない新薬も開発されています。
それでも、ほかの病気の治療よりも患者側の負担は重いです。
また、抗がん剤は投与の量だけでなく投与の順番なども厳格に守らなければなりません。
ですから、通常の看護よりもきめ細やかさや正確さが求められます。
2.化学療法の看護とは?
では、化学療法の患者を看護する際、看護師に求められる役割や注意点をご紹介します。
正確さときめ細やかさが要求されると前述しましたが、具体的にはどのようなことでしょうか?
2-1.レジメンを覚え、実行すること
化学療法には、多数の薬剤が使われます。
抗がん剤だけでなく副作用を抑える薬なども複数投与されるでしょう。
その量だけでなく、投与の順番も決まっていて病院独自のルールがある場合もあります。
この投与の計画のことを「レジメン」というのです。
看護師は、このレジメンを覚えて正確に実行しなければなりません。
同じ部位にがんができて同じような化学療法を受けている患者が複数いたとしても、薬のレジメンは違います。
ですから、医療ミスが起きないように細心の注意を払わなければなりません。
わずかな量の差や順番の違いが、患者の健康に重大な悪影響をおよぼします。
2-2.副作用の対策
化学療法をすると、高確率で副作用が出ます。
メジャーなものからマイナーなものまで副作用はさまざまですが、どのような症状が出るのかは投与してみないと正確なことは分かりません。代表的なものは、貧血、悪心、おう吐、白血球や血小板の減少、下痢、体のしびれなどがありますが、それ以外の症状が出ることもあるでしょう。
副作用は発生してから対処していては遅いのです。
看護師は、どのような副作用が出やすいのか予測して行動することが求められます。
もちろん、予想した症状が出ないこともあるでしょう。
しかし、だからといって症状が出てから対策を考えては、患者の痛みや苦しみがいたずらに長引くこともあるのです。
化学療法の最も難しいところ、といえます。
2-3.精神的なケア
化学療法の苦しさは、多くの方が本やブログにまとめています。
また、映画やドラマでがん治療の苦しさが描かれることも多いです。
そのような情報に振り回されて、化学療法を始める前から不安でいっぱいの患者さんも少なくありません。
また、実際に副作用が出ると、とたんに弱気になってしまう方もいるでしょう。
看護をしていると、「副作用が出るのは当たり前だ」と思ってしまいがちです。
また、「患者は医師から事前に副作用についての説明を受けているのだから、十分理解しているはず」と思うこともあるでしょう。
しかし、説明を受けて理解したつもりになっていても、実際に体験してみると想像以上だったということは珍しくありません。
そんな患者に寄り添うことも看護の一環です。
もちろん、患者の精神的なケアは看護師以外にも医師や薬剤師、病院によってはカウンセラーなどと協力して行います。
しかし、看護師は最も患者と接することが多い立場です。
話を聞いてあげるだけでも違うでしょう。
また、患者の家族のケアも余裕があれば行うことも大切です。
家族の会や相談機関などを教えてあげるだけでも違います。
3.がん化学療法認定看護師とは?
さて、どうですか?化学療法の看護は知識と経験、さらに細かい配慮が必要だということがお分かりいただけたかと思います。
では最後に、化学療法の看護のスペシャリスト、がん化学療法認定看護師についてご紹介しましょう。
どのような職務があり、認定されるにはどうすればよいのかもご説明します。
3-1.がん化学療法認定看護師の職務とは?
認定看護師制度とは、特定の看護の分野で熟練した技術と深い知識を持ち、より専門的な看護を行って看護の向上を図る目的などのために設立されました。
つまり、がん化学療法認定看護師とは、化学療法の知識が深く熟練した看護が期待できる看護師なのです。
前述したように、化学療法は使う薬剤が多く、量だけでなく投薬の順番やインターバルまで決められています。
また、毒性の強いものを使うことも珍しくないため副作用で重篤な症状になってしまう患者もいるでしょう。
がん化学療法認定看護師はそんな患者と家族を支え、安全を守っていくことが第一の職務です。
また、化学療法の看護にたずさわる看護師たちをまとめて指導していく役割を求められることもあるでしょう。
3-2.がん化学療法認定看護師になるには?
正看護師の資格を取得した後で実務経験を5年以上積むと、認定看護師の教育カリキュラムを受講する権利が得られます。
ただし、5年のうち3年は目指す分野の看護経験が必要になるのです。
ですから、がん化学療法認定看護師になるには、3年間は化学療法の看護の実務経験が必要になります。
その後、6か月、615時間以上の教育カリキュラムを受講した後で、認定試験を受けて合格すれば認定看護師として認められるのです。
ですから、高校を卒業した後すぐに看護学校に入り、看護師の資格を取得してから認定看護師を目指し始めた場合でも、資格を得られるのは20代後半になります。
それだけ取得が難しいものではありますが、看護のスペシャリストとして需要が高く取得者には責任ある地位も任されやすいでしょう。
より専門的で質の高い看護をしたい、という方にお勧めの制度です。
4.おわりに
いかがでしたか?
今回は化学療法の看護のやり方とがん化学療法認定看護師についてご紹介しました。
認定看護師についての詳しいことは、日本看護協会のホームページに記載してあります。
興味がある方はぜひご覧になってください。
化学療法は大人だけではなく、子どもにも行われます。子どものケアはより細やかな心配りが求められるでしょう。
また、化学療法の看護は一瞬たりとも気が抜けない分野です。
神経をすり減らすような仕事ですが、だからこそやりがいがあるという方も多いでしょう。
化学療法は、毎年のように新しい治療法が発見されて導入されています。
ですから、長期間化学療法の看護にたずさわりたいと思っている方は、ぜひ認定看護師にチャレンジしてみましょう。