救急車が到着するまでにできる応急処置

突然の意識不明!救急車が到着するまでにできる応急処置とは?

元看護師のゆかり

【執筆者プロフィール】

はじめまして!元看護師のゆかりです。実際の現場での経験や知識を活かし、信頼性の高い情報を提供するよう努めています。最新の求人情報やキャリアアップのヒントなどをインスタグラムツイッターでも発信していますので、ぜひフォローしていただけると嬉しいです!情報を随時更新していますので、ぜひご覧ください。※プロモーションを含みます。

職場は1日の大半を過ごす場所。仕事をしていると、体調が悪くても出社する、持病を抱えながら勤務するなど、ついつい無理をしてしまいます。自分でも気づかないうちに症状が悪化、最悪なことに意識不明で倒れてしまうことだって珍しくありません。そんな場面に出くわしたら、あなたはどのような応急処置をすべきでしょうか?倒れたときには呼吸をしていたのに、救急車がくるまでの数分間で、重篤(じゅうとく)な状態に陥るかもしれません。そこで、今日は、職場で急に意識を失った人への応急処置について、ご紹介します。働く人の健康を維持、環境を管理する衛生管理者として、必ず知っておきたい情報です。ぜひ読んでみてくださいね。

  1. 職場で考えられる意識不明の原因とは?
  2. 応急処置の仕方
  3. 触らないほうがいいケース
  4. 意識を取り戻しても病院へ
  5. まとめ

1.職場で考えられる意識不明の原因とは?

室外、室内に限らず、病気の発症は突然訪れます。まずは、意識不明になる原因から見ていきましょう。

1-1.脳、血管の病気

脳の血管に何らかしらの問題が起き、血管が詰まる脳梗塞や、脳の血管が破裂し出血する脳出血は要注意。脳の病気の場合、瞬時に意識を失うか強い痛みを訴えながら徐々に意識を失います。手のしびれやろれつが回らない、目が見えにくい等の初期症状は脳梗塞の疑いあり。また、別の事態で突然倒れ、脳にダメージを与える2次被害も考えられます。

1-2.心臓の病気

強烈な胸の痛みを訴え倒れこむ人は、心筋梗塞かもしれません。心筋梗塞は、突然の痛みと苦しさで意識を失うケースと、具合が悪くなり、徐々に症状が悪化、気づいたら意識を失っているケースなどさまざま。心停止すると、脳へ送られていた酸素の供給もストップ、意識を失います。心停止から1分経過するごとに、どんどん壊(え)死が進むため一刻も早い処置が必要です。

1-3.外傷によるもの

工事現場などでは、高いところから落下、重機の事故、工場では操作ミスによる外傷などが考えられます。オフィスでは、階段からの落下やエスカレーターで意識を失った場合の2次的被害も注意しなければいけません。外傷で意識を失うのは、強い痛みと出血量の多さが原因。また、特に外傷、出血が見られなくても、身体の中の臓器が損傷している場合があります。無理やり起こす、揺らすなどせず、なるべく動かさないようにしましょう。

1-4.貧血

内臓に疾患や損傷を受けている人はそこから出血し、貧血になり意識を失います。また、女性は日頃から貧血気味の人が多いです。立ちくらみでバランスを崩し倒れ、頭を打って意識を失うこともあります。

1-5.ストレス

意識を失う原因には、心の病も多い現代。強いストレスによる過呼吸で、意識不明となるケースも増えています。他の病気と違い、早く意識を取り戻しますが、心のバランスは崩れたまま。根本的な原因が解消されるまで同じ症状で頻繁に倒れるようになってしまいます。

1-6.てんかんなど持病

てんかんなどの持病では、発作により意識を失います。倒れ方や倒れた場所が悪いと、落下して頭を打つ・頭をぶつけるなど、脳への2次被害も心配です。

2.応急処置の仕方

それでは、次に、意識不明で倒れた人への救急処置をご紹介します。
最初は、意識と呼吸の確認、肩をたたき、「大丈夫ですか?」と耳元で呼びかけ反応を見ましょう。応急処置を行う前には、必ず119番をしてください。

2-1.気道確保

倒れた人をあおむけに寝かせましょう。のどを圧迫しないよう、指で顎を持ち上げ、頭を下に下げます。のけぞるような状態にし、気道を確保。空気の通り道を作り、呼吸を楽に行えるようにします。衣服やベルト、ネクタイはゆるめて。吐き気が見られる場合には横向きの回復退位をとらせ、嘔吐(おうと)物がつまらないようにしましょう。舌が沈下する、嘔吐(おうと)物が詰まるときは、顔を横下に向け嘔吐(おうと)物をかき出す。このとき、首が圧迫されないよう注意します。
頭部から落下した場合は、脊椎損傷の可能性あり。気道確保は頸(けい)椎を動かさないように、頭はのけぞらせず、下あごを天井に引き上げるだけにとどめます。

2-2.心拍、脈の確認

気道が確保できたら、呼吸・心音を確認します。反応がなくても大きく深い呼吸をしていれば、回復退位にし、呼吸状態に注意しながら 救急車を待ちましょう。ほかに人がいて余裕があれば、毛布やストールで身体を温め、体温を逃がさないようにします。熱中症の症状が見られたら、大きな動脈がある箇所(首・わきの下・足の付け根)を中心に、身体をひやしてください。

2-3.心臓マッサージやAED

気道を確保しても自発的に呼吸をしない・心音も聞こえない場合は、心臓マッサージやAEDを行います。心臓マッサージやAEDで血液の循環機能を回復させるのが目的です。心臓マッサージは、手の付け根で胸骨のあたりを沈み込むように、1分間に100回のペースで圧迫。心臓マッサージと併用してAEDを行いたいのですが、ほかに協力者がいない場合は、心臓マッサージを続けましょう。心臓マッサージだけでも十分に蘇(そ)生効果があります。心臓マッサージをいかに早く始めるかが、その後の人生を左右するほど大切なのです。
AEDは、音声で操作ガイドが流れます。ガイドに従って行えば、初めての人でも正確に操作可能です。もし心臓が動いている場合は、AEDが作動しないように設定されていますので、安心してください。

2-4.人工呼吸

心臓マッサージを行うときに、余裕があれば人工呼吸も行います。このとき、すべてを一人でやろうとせず、人工呼吸する人、心臓マッサージをする人、AEDを持ってくる人など、それぞれ分かれて助け合いましょう。救護者が自分一人の場合は、心臓マッサージを続けてください。
人工呼吸のやり方は、心臓マッサージを30回行い、人工呼吸を2回の割合で行います。鼻をつまみ、吹き込んだ空気が鼻からもれないように。援護者の口を大きく開き、覆うように空気を入れ、胸が上がれば、うまく空気が入っています。

2-5.外傷がある場合

外傷では、出血多量が一番危険です。いち早く止血することが生死の分かれ目だと言われています。止血方法は、出血部分をガーゼや布で強く押さえて圧迫。片手で圧迫しきれない傷は、両手や体重を使い圧迫し、止血してください。太い血管から出血しているときは、ハンカチやスカーフなどで、心臓に近い上腕か太ももに巻いて止血します。この方法を行うときは、30分に1回はゆるめ血流を再開、組織の障害を防ぎましょう。

3.触れないほうがいいケース

突然意識を失ったときには、2次被害を防ぐため、むやみに触らないほうがいいケースがあります。一例をご紹介しますのでぜひ参考にしてください。

3-1.高いところから落ちた

高いところから落下したら、頭部、脳、脊椎、腰椎など大きな後遺症を残しかねない部位を損傷している可能性があります。むやみに動かせば、傷ついた脊椎や神経をさらに傷めてしまうでしょう。寝かせたまま頭を両側から包み込むように固定し、救急車を待ちましょう。頭をひっぱる気道確保は行わないよう注意してください。

3-2.感電

倒れた原因が感電のときは、2次的な事故が起こりやすく危険です。まずは、電流の流れを切ることが先決。ブレーカーを落とす、電源コードを抜く。これが終わるまでは触れてはいけません。電流が切れれば、気道確保、心臓マッサージに移ってください。意識が戻ってはっきりしていても、身体の中が損傷しているかもしれません。必ず病院を受診させましょう。

4.意識を取り戻しても病院へ

意識不明で倒れても、救急車がくるまでに意識を取り戻すことも多いです。本人が「大丈夫」と言っても、身体の中は何が起こっているかわかりません。今は大丈夫でも、意識を失うこと自体、身体に何かしらの問題が起きています。みために変わりがなくても、内臓や脳が損傷していたら大変。職場で意識を取り戻した人は、会社に迷惑をかけまいと無理をする人もいます。必ず病院を受診させましょう。その際は、救急車か、病院まで付き添うといいでしょう。倒れた本人が車を運転することは、絶対に避けてください。

4-1.ストレスで倒れたときは?

極度のストレスで起こる、パニック障害や過呼吸で意識を失ったときの対処は、心のケアが大切。症状が治まっているのは、一時的なものでしかありません。早めに心療内科やカウンセラーなどを受診させ、本人に無理のない配置転換、休息をとらせることも検討しましょう。過呼吸は慌てず、紙袋などで自分の二酸化炭素をゆっくり吸わせると落ち着きます。余裕があれば、意識不明者を好奇の目から避けるようなケアもできればいいですね。

5.まとめ

目の前で突然人が倒れると、慌ててしまいますが、まずは119番です。落ち着いて確実な通報を心がけます。そして、真っ先に、心停止を想定した行動をとることが重要。救急車がくるまでの数分間の救命処置で一命をとりとめることもあります。一人で何もかも行おうとせず、周りの人と協力して応急処置を行いましょう。
救急車が1分でも早く到着できるよう、救急車の誘導、車の移動などを手わけして行ってください。
忙しい業務の中でも、救急処置の訓練やミーティングなどを行っていれば、職場の仲間の命、自分の命を救うことにつながります。また、日頃から職場の人に目を向け、体調を崩しやすい人、脳梗塞や心筋梗塞の初期症状がみられたら早めの受診を進めましょう。早期発見を促すことも衛生管理者として大切な役割です。

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