
足浴看護は観察がポイント! 看護計画に沿った足浴の手順と注意点
足湯は全身浴ができない人でも手軽に温浴効果やリラックス効果が得られることから、看護の現場でよく取り入れられてきました。看護として実施する場合には正しい知識のもとに看護計画を立て、安全に実施することが大切です。この記事では看護現場での足浴について知っておきたいことをお伝えします。
- 足浴看護について
- 足浴看護の方法
- よくある質問
この記事を読むことで看護の足浴の目的や方法を知ることができます。患者に合わせた看護計画にお役立てください。
1.足浴看護について
看護の現場における足浴について説明します。
1-1.足浴とは
足浴とは、足だけを湯温につけて温め、清潔を保つ方法です。これまでも、看護や介護の現場では、全身浴ができない人に対して多用されてきました。また、足だけを湯につける方法は、温泉地や一般家庭でも足湯として親しまれています。足浴と足湯の違いは、足湯は足を温めるのを主な目的としているのに対し、足浴は足部の保温に加えて清潔ケアとして行われる点でしょう。
1-2.足浴看護とは
足浴は、入浴やシャワー浴が難しい患者に対して行われる方法です。全身浴と比べて体力の消耗が少なく、体への負担が少ないため、高齢者の看護にもよく取り入れられます。血圧の上昇も少ないため、心疾患など身体機能が低下している患者にも用いられるのです。
足浴の目的は一つではなく、患者の足部の保温・清潔保持・血流を促し筋肉の疲労を軽減することが挙げられます。また、看護師側にとっては、皮膚の状態などを観察し、アセスメントにつなげることや、患者とのコミュニケーションを図ることも大切な目的です。
1-3.効果について
足湯の効果は清潔ケアだけではありません。血流改善や心身のリラックス効果、入眠効果もあることが報告されています。それぞれについて説明しましょう。
- 血流改善効果:血圧が上がることなく血流が増加する。血行が良くなることで全身が温まる。血流が増えると褥瘡(じょくそう)や拘縮(こうしゅく)の予防効果にもつながる
- 心身のリラックス効果:足浴後にはリラックスした状態のときに働く副交感神経が活性化され交感神経が抑制される。足の汚れを落とすことで爽快感も得られ、心身ともにリラックスできる
- 入眠効果:足部を温めることで寝つきがよくなり、睡眠の質を高めることができる。交感神経の活動が抑えられることから、入眠を促す効果が報告されている
参考文献
1-4.最近の傾向、研究など
近年は高齢化により、足浴の需要はますます高まってきました。また、足湯の効果については、さまざまな角度から研究が進められています。たとえば最近では、リラックス効果が注目され、アロマテラピーと足浴を組み合わせた方法などが研究されているのです。今後も一層研究が進み、より良いケアに役立てることができるでしょう。
2.足浴看護の方法
入院患者だけでなく、訪問看護の現場でも足浴看護が行われます。ここではその方法を説明しましょう。
2-1.看護師が行うメリット
足浴は看護資格が必要な行為ではないため、看護師以外でも行うことはできます。しかし、看護師が行うことによって細かい観察ができることから、アセスメントに役立つというメリットがあるのです。また、患者とスキンシップを取ることでコミュニケーションが潤滑になるでしょう。
看護師が足浴をする場合には、足浴の看護計画を作成します。看護目標を立て、観察項目やケア項目、指導項目などを記入しましょう。
2-2.準備、看護手順や方法
2-2-1.準備
安全で効果的な足浴のためには準備が必要です。他の入浴と同じように準備を整えた後に看護を実施しましょう。
- 主治医の同意が得られているか確認する
- 本人の同意を確認
- バイタルサインを確認
- 必要物品・薬・着替えの準備
- お湯の準備(38~40℃)
2-2-2.観察
足の皮膚状態を丁寧に観察します。左右差にも注意しましょう。
- 皮膚の乾燥・変色
- 熱感・冷感
- 浮腫・静脈瘤(りゅう)
- 水虫・褥瘡(じょくそう)の有無
- 爪の状態・色・白癬(せん)がないか
2-2-3.手順
足浴は患者とのコミュニケーションが大切です。表情や訴えに気を配り、姿勢はつらくないか、湯が熱くないか、力の強さは適当かなど、患者と対話しながら進めましょう。手順は以下の通りです。
- 患者の姿勢を確認する
- 湯を容器に入れ患者の足を入れる
- 足関節より10cm上までつかるよう湯を足す
- 湯温や姿勢について患者に確認する
- 足を3分ほどつけておく
- ウォッシュタオルに石鹸を泡立て片足ずつ洗う
- 必要な場合は循環促進のためにマッサージを行う
- かけ湯ですすぐ
- 上がり湯をかけたら片足ずつすぐに拭く
- 乾燥がある場合は保湿剤を塗布する
- 必要な場合は適切な薬を塗布する
- 寝衣を整え飲水を促す
- 疲労度を観察する
2-3.行う際の注意点
足浴を行う際には、以下の点に注意しましょう。
- 患者の体調・皮膚の状態に合わせたお湯の温度にする
- 冬は湯が冷めやすいので湯温の保持が必要
- 麻痺がある患者は自分で感じることができないので、特に注意する
- 洗浄は皮膚の状態に合わせた強さで行う
- 指の間など、水分の拭き残しがないように気をつける
- 足浴後の変化に気をつけて観察する
3.よくある質問
Q.足底部を洗うときに患者さんに「くすぐったい」といわれてしまいます。どのように洗えばいいでしょう?
A.力の加減が弱いのかもしれません。まずは、カーゼなどの表面が荒い布を使って足の甲から洗い、洗ってもらう感覚に慣れてもらいましょう。次に指の間を洗い、その流れで少し強めの力で洗ってみてください。
Q.かけ湯のために用意したお湯が冷めてしまいます。
A.上がり湯は冷めることを見越して少し熱めのお湯を用意しましょう。ふたをしておくと冷めにくくなります。
Q.ベッド上で足浴をするとき、シーツを濡らしそうで心配です。
A.患者の足元に防水シーツを敷き、その上にバスタオルを広げます。このとき、バスタオルは防水シーツからはみ出さないように気をつけてください。お湯の量は、足を入れたときに溢れないよう、初めは容器の半分ほどにしておき、かけ湯で足しましょう。ひざ下に安楽枕を入れる場合は、安楽枕に湯がかかりそこからシーツまで濡れてしまう場合があります。これを防ぐために、安楽枕の上にも防水シーツをかけておくといいでしょう。
Q.適温のお湯を使っていますが、患者さんにぬるいといわれてしまいました。
A.疾患によって足の感覚が鈍くなっている可能性があります。湯温を高くしすぎるとやけどの危険があることを丁寧に説明し、理解を得ましょう。
Q.足浴に適した時間はどのくらいでしょう?
A.長時間の足浴は、皮膚がふやけて損傷しやすくなります。足浴の時間は10分程度としましょう。
まとめ
入浴が困難な患者でも、足浴により温浴効果やリラックス効果を感じてもらうことができます。足浴を看護師が行うことは、足の状態を観察・評価し、適切なケアへとつなげていくためにも大切です。また、患者と看護師のコミュニケーションを図るいい機会ともいえます。より良いケアを目指して足浴の効果を高めていきましょう。