看護師の離職防止対策は? 職場環境の整備や働き方改革がポイント!
看護師は離職率の高い職種の一つとして知られています。看護という専門性の高い仕事に希望をもって就職し、やりがいを感じて職務に励むことを望んでいたはずの看護師が、なぜ離職してしまうのでしょう?
この記事では、離職の原因や問題点を知り、離職防止の対策について考えるとともに、離職が少ない職場の探し方も紹介します。
- 看護師の離職について
- 看護師の離職はなぜ多いか
- 看護師の離職防止対策は?
- 離職防止対策がある職場探し
- 看護師の離職防止対策に関するよくある質問
この記事を読むことで、離職を防ぐための対策について知ることができます。ぜひ参考にしてください。
1.看護師の離職について
まずは看護職の離職の現状と問題点について見てみましょう。
1-1.看護師離職の現状
看護師の離職率は、2016年の病院看護実態調査によると、常勤者では約11%となっており、ここ数年は同様に推移しています。また、新卒看護師の離職率は7.8%でした。一時期は10%を超えて話題になりましたが、その後の業務や処遇改善により離職率は落ち着いてきました。しかし、個人病院では常勤・新卒ともに17%を超えており、職場によって差があるのが現状といえます。
また、看護師の充足状況については「不足感がある」「やや不足感がある」と回答した病院は全体の75%を超えました。現場では離職による看護師の不足が深刻化しているのが分かります。
1-2.離職の問題点
入職率が離職率を上回っていれば、看護師の数は増えていき、人手不足は解消していきそうに思えます。しかし、実際にはそうはいきません。なぜなら、看護師が増えるスピードを上回って需要が高まっているからです。
2025年には団塊の世代が75歳に達し、それ以降は看護・介護を必要とする人が大幅に増えると予想されています。そのため、看護師の離職を食い止めたり、復職を促したりする必要があるのです。
2.看護師の離職はなぜ多いか
看護師の離職はなぜ多いのでしょう。その原因を考えてみましょう。
2-1.結婚・出産と育休の体制
看護職は女性の比率が高いため、多くの女性が20~30代に結婚・出産というライフイベントを迎えることに影響されやすいといえます。実際に、結婚・出産を理由に離職する人が多いのが現状です。これは、結婚後に働くことを家族に理解してもらえないことや、核家族化により子育てに協力が得られない状況を物語っています。
また、公立の病院では最長3年間の育児休暇がありますが、育休後復帰したとしても看護のハードな現場では出産前のように働くことが難しく、結局離職につながることも多いようです。小さなクリニックでは育児休暇自体、取りづらい傾向にあります。
2-2.人手不足による労働超過
慢性的な人手不足といわれる看護の現場では、長時間労働が多くなりがちです。結果として、過重労働による疲労が蓄積し、精神的にも疲れてしまうことが多いといえるでしょう。夜勤や残業など労働条件の悪化は離職に直結する問題といえます。
2-3.人間関係
女性が多い職場につきものなのが、人間関係の問題です。よくありがちな妬(ねた)みや見えの張り合い・うわさ話・グループ化などは、どの職場にも共通の問題でしょう。一方看護職特有のものとして、看護師長に能力を認めてもらえないことへのいら立ちや医師の心無い言葉に傷つくなど、上司とのコミュニケーションに問題を抱えているケースもあります。
また、激務に追われる中で、仕事ができない同僚や後輩のフォローに疲れるなど、患者対応以外に余分な神経を使うことに強いストレスを感じるという声もあるのです。
2-4.リアリティショック
新卒看護師についていえば、大きな離職理由の一つにリアリティショックを挙げることができます。リアリティショックとは、学んできたことや理想と現場との差が大きいことに戸惑い、衝撃を受けることです。自己の無力感に悩んだり、厳しい現場の状況にうまく適合できなくなったりする人も出てきます。
3.看護師の離職防止対策は?
どうすれば看護師の離職を減らすことができるのか、対策について解説します。
3-1.対策の必要性
2025年には団塊の世代が75歳に達し、この年以降に看護・介護を必要とする人が大幅に増えると予想されています。これが「2025年問題」といわれるものです。そのため、2025年までには看護師不足の状態を解消しなければなりません。国はこの問題を解決するために、医療現場の体制を変えて対応しようとしています。加えて、医療現場では、離職者を減らすための対策が必要なのです。
3-2.対策1:働き方改革
まずは、夜勤・交代制勤務・労働時間の適正化が必要でしょう。具体的には、過労死になりかねない長時間労働の見直しや、夜勤・交代制勤務の回数を減らす、休憩時間の取得などの対策です。こうすることで、結婚・出産後も仕事と家事や育児と両立しやすい環境を整えることができます。
3-3.対策2:職場の雰囲気と環境
先輩や師長に相談しやすい環境をつくることが大切です。特に新人に対しては面談の機会を定期的に設けるなど、サポート体制を設けるといいでしょう。看護師の仕事は1人で完結するのではなく、多くの人と関わることが多いものです。日頃から何でもオープンに話せる職場では人間関係にストレスを感じることも少ないでしょう。悩みごとの解決には、メンタルヘルスケアの実践も必要です。
3-4.対策3:学習機会の提供
看護師の専門職としての成長を促すために、スキルアップの機会を提供することが大切です。新人研修にはじまり、職位と役割に応じた内外の研修や学会参加の機会を提供することで、看護の実践・知識・技術がアップします。そしてもちろん、その成果を明確に評価することで、看護師の職務満足度もアップするでしょう。
4.離職防止対策がある職場探し
離職が少ない職場の特徴やどのような対策をしているのかを見ていきましょう。また、対策のある職場の探し方についても解説します。
4-1.離職が少ない職場の特徴
労働環境が整っている職場は離職が少ない傾向にあります。具体的には、夜勤が少ない・残業がない・時短勤務を選べる・有給休暇が取りやすいなどの条件を整えている職場です。産休・育休取得の実績があることも外せません。
同時に、職場の人間関係・雰囲気がよいことも大きなポイントです。立場が異なる職員同士がお互いを思いやり、チームワークよく取り組むなど、サポートしあえる関係が理想でしょう。看護師長の人柄が職場の雰囲気を左右することもあります。面談のときに病棟内をよく観察してみましょう。
4-2.離職が少ない職場の探し方
離職が少ない職場を探すには、看護師専門の転職サイトを利用する方法があります。病床数・看護体制・勤務時間など、希望の条件を入れて検索できるので便利です。候補の病院が複数出てきたら、同一条件のもとに比較するといいでしょう。そのためには、自分が望む条件を明確にしておくことが大切です。
離職が少ない職場を見分けるコツとしては、「大量募集!」「急募!」などの言葉を使った広告を長い間使っている職場に注意することです。「経験者限定」の募集は即戦力を求めているというだけでなく、教育をする余裕がない職場を意味する場合もあります。
また、いくつもの転職サイトにいつでも求人広告が出ている病院は、慢性的に人手不足の可能性があるでしょう。このような職場は、労働環境に問題があったり過重労働となったりすることが多いため注意が必要です。
4-3.離職防止対策成功のポイント
看護師の離職を防ぐには、前述のとおり労働時間や働き方など労働条件を整えることが大切です。同様に、待遇面も大切な要素となります。職務内容にふさわしい額の給与が支払われて、昇給・昇格の基準が明確な職場は、長く働く意欲が生まれるでしょう。
また、中堅看護師に対しては、認定看護師取得の支援や研修制度など、向上心に対する対策も大切です。職務満足度が上がることで継続意思が高まります。そのほかにも、看護業務の見直しや現場の意見の吸い上げなど、看護師の声に耳を傾けて改革することが必要でしょう。
5.看護師の離職防止対策に関するよくある質問
看護師の離職防止対策に関する質問をまとめました。
Q.職場防止対策は何から手をつければいいでしょう?
A.まずは、職場にて職務満足度に関するアンケートをとることをおすすめします。どこに不満を感じているか、何を求めているかがわかるため、対策が立てやすくなるでしょう。
Q.燃え尽き症候群(バーンアウト)を防ぐ方法を教えてください。
A.バーンアウトは、慢性的な疲労や強いストレスに長期間さらされ、心身ともに疲れ果て感情まで消耗してしまう状態です。こうなる前に、十分な休息をとることが必要になります。職場の対応としては、労働時間や夜勤の体制などを見直し、有給休暇を取りやすい環境を整えましょう。
Q.給与を上げれば離職防止になるとは思いますが、予算の関係ですぐには難しい状態です。なるべくお金のかからない方法はありますか?
A.「遂行した職務を正当に評価する」だけでも看護師の気持ちが変わり、モチベーションが高まるでしょう。上司がひと声かけるだけなので、お金もかかりません。その代わり上司は部下の仕事をよく観察する必要があります。粗さがしをするのではなく、よい部分を見つけるように心がけましょう。プラスの声掛けにより職場の雰囲気もよくなります。
Q.新卒看護師の離職を防ぐには何が効果的でしょう?
A.理想と現実の違いに直面する「リアリティショック」から回復させる対策が必要です。新卒看護師は自己に失望した状態に陥ってしまいます。特に教育期間を終えて独り立ちした直後やインシデントが発生したときなどは、メンタルサポートが必要になるでしょう。また、同期や先輩など相談できる人間関係や、上司のサポートが必要です。
Q.結婚・出産による離職にはどのような対策がありますか?
A.短時間勤務や日勤への配置換えなど、働き方を選べるようにするといいでしょう。出産については産休・育休の取得や復職後の働き方にも配慮する必要があります。
まとめ
看護師は専門性が高くやりがいのある職業です。一方で、長時間労働やハードな職務内容で、心身に大きな負担を感じることもあるでしょう。しかし、超高齢化社会により今後ますます看護師は必要とされていきます。貴重な看護師を離職で失わないためにも、職場の環境を整えることが大切です。